その他

【僕が死ぬまでにしたいこと】(著:平岡陽明)

【僕が死ぬまでにしたいこと】(著:平岡陽明) 『みじめな気持ちになる秘訣は、自分が幸福かどうか考える時間を持つことだ』というバーナード・ショーの名言から始まるこの小説。小説の冒頭としてはインパクトのある言葉に魅かれて読み進めることになった。 最…

【わが母の記】(著:井上靖)

【わが母の記】(著:井上靖)を読了。 父が亡くなってから5年。母に今で言う認知症の症状がちらりと見え始めてから、亡くなるまでの記録『わが母の記』。デイサービスや老人ホームなどが作中では一切出てこない時代の話で、兄弟や娘(“わが母”から見ると孫)た…

【徘徊タクシー】(著:坂口恭平)

『徘徊タクシー』(著:坂口恭平)を読了。 恭平の曾祖母は認知症を患っている。祖父が死に、祖父の代わりに彼女を外に連れ出した時、彼女は明確な意志を持って進み始めた。そうして辿りついた場所で、ココとは全く違う地名である「ヤマグチ」と呟いたのだ。 そ…

【人間失格】(著:太宰治)

【人間失格】(著:太宰治)を読了。 小説はまとめて買うタイプの人間だから、時々決め切れなくて「どうせだったら文豪と呼ばれた人の作品を読んでみよう」と有名どころを手に取ることがある。それが今回の『人間失格』である。 『人間失格』は物語という形を取…

【幸せの値段】(著:梅田みか)

【幸せの値段】(著:梅田みか)を読了。 生きる上で避けては通れないのが“お金”である。どこかの国では若年層の失業者であっても陽気に楽しく生きているらしい記事を読んだことがあるけれども、日本でそう生きられる人間は多くない。一説によると日本人はネガ…

【雪冤】(著:大門剛明)

【雪冤】(著:大門剛明)を読み終わり。 冤罪で死刑囚となり執行が迫る息子を救うために、冤罪の証明に尽力する父親が主人公。 冤罪による死刑が大きなテーマとなっていて、読者である私たちに死刑の是非を問う内容になっている。この作品はもちろんフィクショ…

【カルテット!】(著:鬼塚忠)

【カルテット!】(著:鬼塚忠)を読了。 同じ名前のドラマがあったけれども別物。そちらは『カルテット』でこっちは『カルテット!』。 崩壊寸前の家族が音楽で再生をする物語。バイオリニストとして将来を有望視されている中学生のボク、かつてフルートを習っ…

【向こうの果て】(著:竹田新)

【向こうの果て】(著:竹田新)を読了。 同棲相手を殺害した容疑で逮捕された池松律子。彼女の取り調べを担当する津田口亮介。彼女を知る男たちの証言から見えてくる彼女の顔はどれも違っていて…。 誰かから見ると姉のようで、誰かから見ると妹のよう。気高い…

【死にたくなったら電話して】(著:李龍徳)

【死にたくなったら電話して】(著:李龍徳)を読了。 本を読んでいても文字が滑っていくような日々が続いて、久しぶりの読書。そしてこのタイトル。何かがあったわけでもなく、たまたまストックとして残っていたのがこの本だっただけです。 【死にたくなったら…

【岸辺の旅】(著:湯本香樹実)

『岸辺の旅』(著:湯本香樹実)を読了。 三年前に忽然と姿を消した夫が帰ってきた。しかし夫・優介が言うに、本人は蟹に喰われて死んだらしい。妻・瑞希は帰ってきた夫と共に、夫のこの三年間を辿る旅に出る。 夫は瑞希の元に帰ってくるまでの三年間に、新聞配…

【海が見える家】(著:はらだみずき)

【海が見える家】(著:はらだみずき)を読了。 父子家庭で育った主人公(男)とその姉。入社1ヵ月で会社を辞めた直後、田舎暮らしをしていた父の死を知らされた。そうして遺品整理をすることになった主人公。疎遠にしていた父の暮らしが見えてきて…。 自立して親…

【田村はまだか】(著:朝倉かすみ)

『田村はまだか』(著:朝倉かすみ) 舞台はとあるバー。小学校のクラス会の三次会で同級生だった「田村」を待っている。そこで語られる小学校時代の思い出、そしてお酒が入ったことで各々が振り返る40歳までの日々。そんな中で浮かび上がってくる「田村」の人…

【ひとり日和】(著:青山七恵)

『ひとり日和』(著:青山七恵)を読了。 20歳の知寿(女)は71歳の吟子さんの家に居候することになる。そんな生活の中でアルバイトをしたり、恋をしたり、失恋したり。時には吟子さんの恋にあてられて、日々を過ごしていく。 年配者と人生に悩む若者の共同生活っ…

【日曜日たち】(著:吉田修一)

【日曜日たち】(著:吉田修一)を読了。 私は初めましての作家さんだけれども、調べてみると【悪人】(妻夫木&深津のやつ)や【横道世之介】(吉高由里子のやつ)といった映画化された作品の原作者だった。どちらも観ていないけど。 接点のない5人の男女の良い意味…

【歩いても 歩いても】(著:是枝裕和)

『歩いても 歩いても』(著:是枝裕和)を読了。正直なところ全然私にはハマらなかった。 15年前に溺れた少年を助けて亡くなった長男。無職の次男と妻とその連れ子、未だ受け入れられない母親、プライドの高い父、自由な姉とその家族、その命日に合わせて集まる…

【相田家のグッドバイ】(著:森博嗣)

『相田家のグッドバイ』(著:森博嗣)を読了。 森博嗣と言えば、小説がいくつも映像化されている有名な作家だけれども、森博嗣の小説に触れるのは初めてかもしれない。 投資とかお金の勉強をしていると、たまに名前を耳にするんですけどね。鉄道とそれを走らせ…

【僕と彼女の左手】(著:辻堂ゆめ)

【僕と彼女の左手】(著:辻堂ゆめ)を読了。 初めましての作家さん。表紙をペラッとめくった“そで“の部分に「1992年生まれ、東京大学卒」と書いてあるのが目に入ってくる。すごいね。若く作家にもなって、頭も良いんだ。 幼い頃に脱線事故に遭いトラウマを持っ…

【千の扉】(著:柴崎友香)

【千の扉】(著:柴崎友香)を読了。 夫の祖父が入院・療養の間だけ祖父が住んでいた団地に住むことになった千歳は、祖父に『団地に住んでいるはずの高橋さんを探して欲しい』と頼まれる。高橋さんを探しながら、昔からそこに住んでいる人と出会い、日本の過去…

【月光の夏】は8月に是非とも読んで欲しい1冊

【月光の夏】(著:毛利恒之)を読了。 私は月末に翌月読む本をドバッと買いに行く。たまたま印象に残っているだけなのかもしれないけれど、導かれるように7月~8月には戦争を題材にした物語を読み、2月~3月には震災を題材にした本を読んでいる気がする。 【月…

【小野寺の弟・小野寺の姉】(著:西田征史)

【小野寺の弟・小野寺の姉】(著:西田征史)を読了。 アラサー・アラフォーで実家に2人で住んでいる姉弟。これだけを見ると「ウゲーッ」と思ってしまう人もいるかもしれないけれど、2人は幼い頃に親を亡くし、2人で生きてきた。不器用な言動が目立つ2人の、素…

【檸檬】(著:梶井基次郎)

【檸檬】(著:梶井基次郎)を読了。 私の購入した文庫本には14の短編が収録されていて、【檸檬】はその表題作だった。 梶井基次郎が書く小説はどれもこれも死のニオイがする。かといって、死を悲観して憂鬱な日々を書いているわけではなく、残りの寿命を計算し…

【幸せになる百通りの方法】そんなのほんとうにあったら、人に教えるわけなかろ

【幸せになる百通りの方法】(著:荻原浩)を読了。 タイトルから『話し上手になる〇個の方法』といったようなハウツー本かと思いきや、この本は実は小説(フィクション)である。【幸せになる百通りの方法】はこの本に7編収められた短編の表題作だ。 主人公の英…

【誰かが見ている】愚痴り始めたら止まらなくなった

【誰かが見ている】(著:宮西真冬)を読了。 「母親は大変なんです」「育児は孤独なんです」、あぁまたこういう感じの内容か、と思う。最近多いですよね。 実際に大変なんだろうなとは思う。だけど、そういう人たちに優しくしてあげられるほどの余裕は私には無…

【ハル、ハル、ハル】クセがスゴイ

【ハル、ハル、ハル】(著:古川日出夫)を読了。タイトルにつけた「クセがスゴイ」は、お笑い芸人の千鳥の発音で読んでもらえたら幸い。 本書とは関係ないのだけど、GW前から本のストックが無くなってしまっていて。どこに行っても混む連休に買いに行きたくな…

【革命前夜】歴史の教科書で見た単語が初めてリアルになった

【革命前夜】(著:須賀しのぶ)を読了。 2022年に入って20冊弱ほど小説を読んできたけれども、今のところ今年1番に面白い本だと感じた。重厚な小説。こういう本にもっと出会いたい。 昭和から平成に変わるタイミングで東ドイツに音楽留学した日本人男性が主人…

【嘘を愛する女】目を覚ますんだ、長澤まさみ!

【嘘を愛する女】(著:岡部えつ)を読了。 これ長澤まさみと高橋一生で実写化されていて、映画自体は観ていないんですけど、当時CMが流れていたなあなんて薄っすらと記憶があります。へぇ、はぁ、こんな内容の物語だったんですねぇ。 東日本大震災が起きパニッ…

【リレキショ】新しい自分として生きるための必要事項

『リレキショ』(著:中村航)を読了。 ”姉さん”に拾われて”半沢良”になった僕。 生年月日と家族構成に『姉1人』、資格『なし』、趣味・特技『読書』と書いた履歴書と、A4の白紙に資格・免許『どこでもいける切符』、趣味・特技『護身術・アイロンがけ』と書い…

【東京すみっこごはん】コロナ禍で奪われたかもしれないモノ

『東京すみっこごはん』(著:成田名璃子)を読了。 商店街の脇道に佇む古ぼけた一軒家には『共同台所 すみっこごはん ※素人が作るので、まずい時もあります。』の看板が。料理を作る人はくじ引きで決定。わいわいガヤガヤ、悩みや生き辛さを抱えた人たちが温か…

【ひぐまのキッチン】(石井睦美) 感想

『ひぐまのキッチン』(著:石井睦美)を読了。 ”ひぐま”こと樋口まりあは、就活にことごとく失敗したものの、祖母の計らいでとある会社に入社することになる。そこで勤めることになったのは秘書業務なのだけど、社長のスケジュール管理、来客の対応…その他に、…

【バンクーバーの朝日】日本沈没、日本を脱出した日本人のパターンその1

『バンクーバーの朝日』(著:西山繭子)を読了。 「海の向こうのカナダで三年働けば、日本で一生楽に暮らせる」。見果てぬ夢・国家・戦争・差別に翻弄された悲劇の日系移民の物語。 面白かったのが、移民1世ではなく彼ら彼女らの子どもである2世が主人公の物語…