【嘘を愛する女】(著:岡部えつ)を読了。
これ長澤まさみと高橋一生で実写化されていて、映画自体は観ていないんですけど、当時CMが流れていたなあなんて薄っすらと記憶があります。へぇ、はぁ、こんな内容の物語だったんですねぇ。
私、昔【やがて海へと届く】という作品で、『東日本大震災に関してドキュメンタリーとして小説化するなら未だしも、完全なフィクションのネタにするのは早いんじゃないですかね』という感想を残しているんですけど。
まあ、この作品も映像化される?した?らしいじゃないですか。多くの人にとって過去のことになっているんだなあなんて思ったりもしました。
でも【嘘を愛する女】で出てくる東日本大震災の扱いってもっと雑ですよ。2人が出会うためのアイテム。その後にちっとも出てこないので、ただそれだけのために使われています。
現代人がドラマチックに出会ったり別れたり、生まれ変わったように生きたり、誰もが知っているインパクトの強い出来事だったので、物語の起承転結のどれでもに使い勝手が良いんだろうと思いました。作家なんだからそこに甘えず、シチュエーションを考えてくれよとも思いますけど。
読み終わった瞬間は、何だか綺麗にまとまっていた気がしたんですけど、冷静になってみると「いやいや、ちょっと待てよ」と。
長澤まさみが「本当の彼は誰なのか」を解き明かすために、彼のパソコンに入っていた彼が書いた小説を頼りに旅に出るんですね。そこで知る彼に起きた過去のこと。
途中、高橋一生のモノローグみたいなものが入るので「あぁ、彼はこんなことを思っていたのか」「ちゃんと彼女が大事だったんだな」って読者には届くんですけど、よくよく考えるとエスパーじゃないんだから長澤まさみには彼の胸の内なんて届きようがないんですよ。
最後は、男の嘘を受け入れる女、みたいな形でハッピーエンドでしたけど、長澤まさみからすると、妻が捕まったけれど面会にも行かず、自分には5年嘘を付き続け、自分との未来を妄想チックに小説にしている男、でしかないはずなんですが。高橋一生のモノローグ部分が長澤まさみの都合の良い想像だと言われても成り立ってしまいそう。
そもそも長澤まさみの役が高橋一生の役が持っているだろうと思うほどの誠実さや愛情深さを実際に持つ男は、結婚したがっている女性と付き合っていて5年もそんな嘘を付き”続けない”のよ。その男はやめておいた方が良い。
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