【海が見える家】(著:はらだみずき)

 

【海が見える家】(著:はらだみずき)を読了。

 

父子家庭で育った主人公(男)とその姉。入社1ヵ月で会社を辞めた直後、田舎暮らしをしていた父の死を知らされた。そうして遺品整理をすることになった主人公。疎遠にしていた父の暮らしが見えてきて…。

 

自立して親と疎遠になってしまうのも、まあ良し。無職ゆえに時間のある主人公が遺品整理を請け負うことになるのも、まあ良い。ただこの姉は「金、金」言い過ぎだ。家は土地くらいなら売れるかな、とか。凍結した通帳がどうたら、とか。そういう主張をするわりには遺品整理に訪れるわけでもなく。過去に婚約破棄されたといった情報が出てくるのだけど、この性格のせいじゃない?って思ってしまった。

 

それが就職Q&Aやネット上で繰り返される一般論であることも承知していた。そういう一切合切にこれまで踊らされて生きていた。常識とか心得とかセオリーとか生きる術だとか……。(P121)

 

この文章から分かるように、主人公が父亡き後、父の生き方に触れて、今後の生き方を考え直す時間を持つといったストーリーである。

 

目指す生き方というと、資本主義のトップオブトップのような華やかな生き方か、そこから降りて穏やかに生きるか、に分かれると思う。

 

若いころは前者(というよりお金が稼げること)を目指していたが、アラサーになった今は後者が私の理想だったりする。

それは競争社会に疲れたというのも本音だし、昔ほど華やかな生活に憧れが無くなったというのも1つ理由だし、なによりこの歳になると自分の手が届くランクが見えてしまって人生の舵を別方向に切った方が良いのではないか、と考えるようになったことも理由なのだと思う。

 

ネットの海に投げられたどこかの誰かの「田舎だし、給料も低いし、オシャレなお店もとかも無いけど、海辺を犬と散歩しているこの生活は悪くないなって思う」という書き込みにグッと来るぐらいには、学生時代に勝者だと教えられてきた生き方はもう良いかなって感じ。

 

主人公の彼女が「同期(男)に沖縄旅行に誘われているの。」(行ってほしくなかったらさっさと再就職しやがれ)と言うくらいの暗雲立ち込める関係の結末が書かれていなかったのが個人的にはすごく気掛かりだったのだけど、どうやら続編が出ているらしい。この彼女に関する記述があるかは定かではないけれど。

 

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