【カルテット!】(著:鬼塚忠)

 

カルテット!】(著:鬼塚忠)を読了。

同じ名前のドラマがあったけれども別物。そちらは『カルテット』でこっちは『カルテット!』。

 

崩壊寸前の家族が音楽で再生をする物語。バイオリニストとして将来を有望視されている中学生のボク、かつてフルートを習っていたが最近は素行不良の姉、ピアニストを目指していた過去もある失業中の父、イライラしているチェロ経験アリの母。

 

最初は祖母の誕生日に演奏をすることをゴールに始まった家族再生をかけたカルテット。まあこれは内輪というか、上手くても下手でも形になることに意味があるから良いんだけど、その失敗を経て辿り着いたのが、お客を入れて、2000円のチケット代も払ってもらって、という演奏会は上手く行き過ぎでは…と思う。

それぞれが楽器の演奏経験があったとしても、かなりのブランクのある素人。しかも無名の家族に2000円のお金を払ってくれる人はそう多くないんじゃないかな。

 

それと同じような疑問で、日給2万円でレストランで演奏する仕事を貰えるのも「えぇっ!」という感想を抱く。下手くそなフルートを奏でるヘソ出しカジュアルファッションのJKが大歓迎されちゃう展開も個人的にはビックリした。

演奏家のいるレストランって雰囲気があって少し高価で、というイメージを持っているんだけど、それは私の経験が少なすぎるんだろうか。

 

「あっ面白くなりそう」と思ったらその先の展開がイマイチでその気持ちが萎んで、「あっキタキタ」と思ったらやっぱりイマイチで、という繰り返し。家族でカルテットなんてすごく面白くなりそうな題材なのに。

 

親が主人公に対しては演奏を一緒にしただけで何か悩んでいることに気が付くくせに、姉に対しては姉が泣くまで気が付かないっていうのも、せっかく一緒に演奏しているという絶好の攻めポイントがあるというのに何て上手くない話の作り方なんだろうと思う。

 

演奏を通じて「努力しているんだな」っていうのが感じ合えたり、「悩んでいるのかな」っていうのを家族が感じ取ったりして、それで家族が再生していく展開を期待していたんだけど。それこそ曲の解釈を語らって知らなかった互いを知る、なんて展開も作れたじゃん。

 

音楽の関係のないところで問題が起こって、音楽の関係のないことで解決していくから、勿体ないなあという印象が残る。

 

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