【小野寺の弟・小野寺の姉】(著:西田征史)

 

小野寺の弟・小野寺の姉】(著:西田征史)を読了。

 

アラサー・アラフォーで実家に2人で住んでいる姉弟。これだけを見ると「ウゲーッ」と思ってしまう人もいるかもしれないけれど、2人は幼い頃に親を亡くし、2人で生きてきた。不器用な言動が目立つ2人の、素朴でちょっと切なく、思いやりが見え隠れする物語である。

 

弟の方は数年前に長く付き合っていた彼女がいたのだけど、彼女の同棲したいという願望に答えられず、「ちょっと変だよね、お姉さんとの関係」と言われて破局してしまうシーンがある。

彼女の気持ちも分かるし、弟の気持ちもわかるし、何とも切ないシーンだった。これが普通の姉弟だったら「弟が自立できていないよ」って思うんだけど、親代わりをしてくれた姉を考えると「同棲したい」「ハイ、しましょう!」ってスムーズに思えないのは当たり前だ。

 

キョウダイじゃなくても、親子だって、親ひとり子ひとりで育ってきた人は同棲・結婚で親をひとりにすることに罪悪感に似た気持ちを持つ人が多いと聞く。

『持続可能な恋ですか?』というドラマの上野樹里のお家みたいに、親と子でせーの!で婚活に励めたら、どちらかが結婚に至らなくても、結婚のタイミングが一緒じゃなくても、罪悪感が少なく事が進むのだろうけど。

 

一方で姉の方は、好きな人にご飯に誘われてすごく嬉しくなるんだけど、結局「好きな子がいるから、その子が好きそうな物を教えて」ってパターンで、作中で姉に関する描写が恋愛と縁遠い感じだったから予想はしていたんだけど、やっぱり悲しかったなあ。勘違いしなければこんなに辛くないのに、期待しなきゃよかった、って姉の心理描写が悲しくて。

 

弟の前では悲しい顔を見せないように努めるんだけど、弟はやっぱり気が付いていて。でもそんな時に核心に触れようとせずに、ちょっと励まそうとする様子は、もうまさに異性のキョウダイの距離感そのもの!と感心した。

 

私にも異性のキョウダイがいるのだけど、一緒に住みたいと思えるほど深い愛情を持っているかと聞かれるとそうでもなく。だから、小野寺の姉弟がもっとワガママで身勝手な人間だったら、恋愛に限らずとっくにそれぞれの人生を歩めているのになあと思ってしまうんだけど、それはきっと私の視野が狭いから。

 

何が大事かは他人が決めることじゃない。姉弟の在り方が変わらないことを条件に幸せになる方向を探る2人の生き方を、外野がわーわー言うものじゃないですよね。

 

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