【誰かが見ている】愚痴り始めたら止まらなくなった

 

【誰かが見ている】(著:宮西真冬)を読了。

「母親は大変なんです」「育児は孤独なんです」、あぁまたこういう感じの内容か、と思う。最近多いですよね。

実際に大変なんだろうなとは思う。だけど、そういう人たちに優しくしてあげられるほどの余裕は私には無いのよ。

 

独身、というか子どもがいないと「楽してる!」みたいなことを言われたりするじゃないですか。

ちょうどこの作品にも、自分の黒い感情をアンチスレッドを検索して、叩かれている人を見ることで解消するキャラクターが出てくるんだけど、ネットでは子供を持たない選択をした人に「存在価値がない」「生産性がない」「年を取った時に悲惨」「子なし税を取れ」なんて言っていたりするんですよ。そんな言葉は、子どもを産んでいない人が子どもを産んでいない人に言っている、なんて考えられないじゃないですか。つまり子どもがいる人から発せられている言葉なんですよね。

そんな人たちに優しくしたいなんて思えるわけなくないですか?

 

だからこういう『親って大変なんだよ』って内容のものを見ると、だって親なんだし当たり前じゃんって。他人の人生を背負うんだからこれまでみたいに過ごせるわけないじゃない、って切り捨ててやりたくなります。でも良いですよね。母親って大変だよねって慰められる内容の作品や著名人の発言が世の中にたくさんあるから。こっちは言われっぱなし。自分の世代が子どもを持つ人も出てきて、子どもはやんちゃでもおませさんでも可愛いけれど、子どもを連れている親は苦手な人が多いな、って思うようになりました。

 

―産んだことがないから、分からないだろうけど。

妊娠して出産することが、どれほど偉いと思っているのだろう。母は偉大だというけれど、それは<しっかりと>子育てをした人に対して言うことなのではないか。(P58)

 

この文章に「そうだそうだ!」と言いたくなった。作中に出てくる親に愛されない子ども・夏紀は本当にずっと可哀想だったな。この子に関しては、小説自体はハッピーエンドだったけれどモヤる。

 

あと、

悪口が書き連ねられたその場所は、吐き気がするほどみんながみんな、自分のことを棚にあげて、批判していた。百貨店が噂話の温床なら、ここは悪意の温床だった。(P218)

 

この文章に反省と安堵を感じた自分がいます。”自分のことを棚にあげて”という部分にドキリとしたし、逆この部分に『悪意のある言葉に真正面から向き合う必要はない』とも思いました。

 

もう、どんな立場の人だって、何かを成し遂げていようがいまいが、人と比べず穏やかに生きていけたら良いですよね。子持ちだけじゃない、子どもがいなくても、この社会で生きていくのに心をすり減らしているのです。

 

誰かが見ている (講談社文庫) [ 宮西 真冬 ]

価格:748円
(2022/5/26 04:03時点)