【風に顔をあげて】幸せでいるために欠かせないこと。

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レールを外れた生き方は茨の道だなんだと言われるけれど、いわゆる”一般的”と言われる生き方だって楽じゃないよなあと思う。

 

雇われて、結婚して、子育てをして…そんな普通の生き方にもプロフェッショナルな人とアマチュアな人がいる。普通の生き方の中にもヒエラルキーが存在している。いや、むしろみんなが同じことをするからこそ差が分かりやすくヒエラルキーを感じずにはいられないのかもしれない。

 

そりゃ普通界の頂点にいれる人は居心地が良いだろうけど、そうじゃない人は生きているうちに何度も劣等感を刺激される。

昨今のキラキラ(ぶっている)SNSは現実で「イイネ!」って言ってもらえない人のイイネ依存だと思う。

 

「普通の生活、普通の幸せには遠いけど、やりたいことして生きてるわ」って人の方が心中穏やかだったりするんじゃないか、と何周か回って思う。

 

★★★★

この小説『風に顔をあげて』の主人公は風実なのだけれど、その弟の幹について語りたい。

彼は親にゲイをカミングアウトするが、親はその事実に向き合おうとしてくれない。それどころか「大学はココに行きなさい、そうすればこの仕事なら用意できるから」と意地でも彼をそっち側に行かさず”普通”で居させようとする。

 

何というか、親の言うとおりにして真っ当な人生を歩んだとしても、それでは幹は幸せになれやしないのではないか、と思う。

 

風実と幹の母親が思い描く理想の未来はまるでSNSのイイネ!を獲得するための生活のようで反吐が出る。

(息子は)それなりの大学を出て、いい会社に就職して、結婚して、マイホームを建て、晴れて親子で一緒に暮らす。わたしは嫁いびりなんか、しない。この頃は働くお母さんが普通だから、孫の世話をする人間がいるほうが便利でしょう。家事と育児は引き受けるから、若夫婦はそれぞれ働くの。それがお母さんの夢よ----。(P94)

 

学歴があるのも、お金あるのも確かに幸せだろうし、条件の良いパートナーがいることも幸せなんだと思う。ナイよりはアル方が良い。

 

だけど1番求めていること、幹でいうところの『隠さずに(ゲイとして)生きていきたい』という部分が欠けていたら、他にどれだけ自慢できるモノを持っていても心はいつも寂しいと思う。

 

個性うんぬんよりも普通の上位でいることが正しいと育てられた私は、自分の心からの欲求にすごく鈍いのだけど、だからこそこの言葉を定期的に思い出すようにしている。

どうか、誰かが考えた誰かを満足させる生き方をしないで。そして、そのことをプレッシャーに感じて、せっかくの人生を台無しにしないで。

引用:『27歳でこの世を去った女性の「人生最期のアドバイス」が、心に響く

 

『幸せになるためにうまれてきたんだから』

この言葉を「誕生できて幸せでしょ?」という意味だと捉えて、すごい綺麗事を言うもんだなあと昔は思っていた。

でも、最近では「心がギスギスすることじゃなくて、幸せを感じることをしていきなさい」そんな意味が込められているんじゃないかと思っていたりする。

 

『幸せ』でいるために1番大事なこと、それは世間体や自分の中の普通をとっぱらって自分と向き合わないと見えてこないのだろうなあ、と思いながら読み終えた。

 

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