【ニュータウンは黄昏れて】衣食”住”人生の基本なのに難解で

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バブル崩壊前夜に購入してしまった分譲団地。バブルが崩壊、その後20年の間にどんどん値段が下がっていく。残っているローンより今売られている値段の方が安いなんて…

 

20年の間に始発駅じゃなくなり座れていた通勤は長時間サバイバルに、しかしながら家を売ったところで残るのはとんでもない借金!と想像するだけで真っ青な不遇なのだけれど、これがフィクションではなく作者の垣谷美雨の実体験なのだから尚のこと凍り付く。

 

「値上がりするんで数年後に売れば良いですよ」と5000万円の家がバンバン売れていた好景気の時代があったなんて1990年代生まれの私には俄かに信じがたい。

 

母親の頼子は「あと数年早く買っていれば得が出来たのに(バブルが起こる前で値上がり前だから)」「あと数年遅ければ買っていないのに(バブル崩壊でどんどん値崩れするから)」と嘆く。

 

たったの『あと数年』で人生は大きく狂ってしまうから怖い。

 

★★★★

20代アラサーの私は生まれながらに赤字の世代で、年金の払い損のイラストはしょっちゅうTVで放送される『もののけ姫』に負けず劣らないぐらい何回も見た。

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画像:https://www.kosensei.com/work/gapinpension.html

 

加えて、高校を卒業した後は専門なり大学なり進学するのが一般的な世代で、社会に出た瞬間、奨学金という借金を背負っている。

 

頼子は高い時期に家を買ってしまったからパートは辞められないし、通勤でヘトヘトの旦那にも「近場で仕事を探してみたら?」と言ってあげることすら出来ないと言うが、家を買わずとも、多くを望まずとも今の若い世代は仕事から逃げられないのだ。

 

とはいえ、金銭に恵まれているとされる高齢者は戦争を経験しているし、バブルによる『24時間働け』って風潮は大変だっただろうし、氷河期世代は言わずもがな、若い世代の将来の安定の無さには常に不安になるし…結局どの世代に生まれたってツライのかもしれない。

 

親がローンで苦しんできたことを近くで見ていた娘の琴里は、自分が家庭を持ってこんな風に考える。

家賃はお金をドブに捨てているようなものだと言う人も多いが、私の考えは違う。食費と同じで必要不可欠な出費だ。持ち家さえあれば安心だと言う人も少なくないが、それは現金で買った場合だけだと思う。住宅ローンを組めば、この先三十五年もの長きに亘って自由を失うことになる。自分の両親がそうだったから間違いない。(P429)

 

家族ができたから家を買おうと決断する人は多いが、私は独身だからこそ持ち家が欲しいと思っていた。老人の1人暮らしは家が借りれないと聞くから、それまでに棲み処を手に入れたかったのだ。

 

だけどこの本を読んでから、現役は賃貸で過ごし、老後に小さな中古マンションをキャッシュで買う方が良いのではないかと思うようになった。

 

『終身雇用』『年功賃金』『正規職』などなど様々なセーフティが崩れている現代における最強の武器は、”いつでも生活レベルを下げれること”であるような気がする。

 

母・頼子の言葉「お金がなくても工夫で乗りきりなさい(P489)」

そうだ、大抵のことは何かしらで代用・応用が利く。無いなら無いで、強く賢く楽しんで生きていこう。

 

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