【くうねるところすむところ】マイホームに憧れない女が読んでみた

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前回読んだ【言い訳だらけの人生】はオタクがヒートアップしちゃった感があって読み辛い部分はあったけれども、今作は今までと同様な作風の平安寿子だった。良かった。すごく読みやすかった。

 

【くうねることろすむところ】は三十路の梨央という女性が未経験で建設業(工務店)に転職するお話。

 

”家”は大概の人にとって人生で1番高い買い物だから「やっぱりあぁしたい、こうしたい」と要求が変わりがち。思い入れやこだわりも強い。その度に「予算は?時間は?」と現場はピリリとする。

技術は優秀なのに、施主とのやり取りを上手く仲間内で共有できないコミュ障男もいたりして…。

 

梨央は無関係な業種からやってきたので、当然、壁を打ったり、柱を建てたり、そんな技術は持ち合わせていないのだけど、就職した工務店に足りていなかった施主と職人、職人と職人の間に入り現場をスムーズに取り仕切る役割を与えられる。

 

先日読んだ【ニュータウンは黄昏れて】で「持ち家なんて要らない」と思ったのだけど、”夢の”マイホームと言うだけあって、家作りは希望に満ちていて少し羨ましくなった。

 

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賃貸マンションから引っ越す時、ガランとした部屋を見ながら思い出に浸って少し寂しくなったりする。私はそれが結構好きなのだけど、出ることを前提とせず、思い出が増え続けていく箱というのはどんな感じなんだろう。

作中では一軒家は”思い出の容れ物”なんて言葉を使われていたけれど、マンションでは力不足なのだろうか。

 

正直、あまりマイホームに憧れたことがない。

マイホームの醍醐味と言えば、自分の理想を限りなく再現できるということだと思うが、住みたい家が具体的に思いつかない。

ガランとした更地から「きゃっきゃっウフフ」と家族が過ごしている姿を思い浮かべるほどの想像力が備わっていないのかもしれない。

 

そういえば、空き部屋ではなくまだ人が住んでいる部屋への内見の場合、モデルハウスのように綺麗すぎる部屋だと意外と契約に繋がらず、生活感のある部屋の方が好感触なことが多いなんて話を聞いたことがあって、分かる気がするなあと思った記憶がある。

 

コロナウィルスの前は家とは”ただ寝るところ””物を置くところ”という役割でしかなかった人が多いそうだ。それが生活しなきゃいけないスペースになってあら大変。

 

1R~1DKぐらいの部屋をいかに充実させるかって小説があっても良いのになあ。リノベーションを題材にした小説なんかももっと出てくれば良いのに。

 

本作に出てくる職人さんの働きや考え方にはグッとくるものがあった。

新築で家を買う可能性は低いだろうけど、リフォームやリノベーションの際にこんな人たちにお世話になれたら…と思う。

 

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