【姉の結婚】大は小を兼ね、ない!

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お金持ちになりたいか?と聞かれればなりたいし、宝くじを当てたいか?と聞かれれば当てたいなあ、と思う。

 

…そう思うのだけど、実際に3億円当たってしまったら困る気がする。

高級車や高級ブランドには興味がないし、 家も新築よりは中古マンションの方が良いし。何でも買えちゃうのもつまらない気がする。

 

私は幸せにも『身の丈』があるんじゃないかと思っていて、3億円当たるよりも1万円に当選して「今日はスーパーカップじゃなくてハーゲンダッツ大人買いしよう!」の方がワクワクする。

 

豪華客船で世界1周よりは、台湾にバビュンと行ってみたい。

★★★★

姉の結婚』には8篇の短編が収録されている。

そのなかの『結婚式』という章は玉の輿婚に成功した長女の話だ。

 

玉の輿婚と言っても、うんと年の離れた人と結婚するわけでもないし、顔がブチャイクでもない、人柄だって嫌味のない性格。

育ち良し、ルックス良し、お金良し、同世代、どこを見ても◎をもらえる旦那を手に入れたのだ。まさに誰もが羨む結婚。

 

しかしながら蓋を開けてみると、◎な旦那に相応しい妻であることを求められる。旦那一家は意地悪をしているつもりはなくて、旦那一家にとってはそれが息を吸うように当然のことなのだ。

未だ見ぬ子供にも「エリートな学校に通わせなければならないの」と孕む前からプレッシャーを感じる始末。

 

幸せになりたくて、それに相応しいはずだと選んだ◎な男性。条件だけ見ると×が付く項目など見当たらない男性。

 

でも長女は本当に幸せなのだろうか?と疑問符を浮かべずにはいられない。ゲラゲラ笑える生活こそ幸せなんじゃないだろうか。

 

誰かから羨ましがられる自分でありたい、という気持ちが私も全くないわけではないけれど、”満足”という感情は他人ではなく自分で決めるべきだ。

「いいね」「羨ましいね」という言葉はすごく甘美だし、何度でも聞きたくなる。まるで麻薬だ。だからこそ溺れないようにしなきゃいけない。

 

姉はまるで別人になったみたいだった。実家にいるときには好き勝手なことをやっていたのに、理想の人と結婚したとたんに、勝手なことができなくなってしまった。それだけの度量や技量が備わっていればまだしも、我が姉ながら、ちょっと首をかしげたくなる部分が多かった。(P130)

 

幸せ、特に対人関係に関する幸せって、ありのままの自分を受け入れてもらえるかどうかがすごく大きいらしい。

 

こんなわたしで、ごめんなさい』という小説の感想でも語ったのだけど、私は格好付けた自分を評価されると少しさびしかったりする。面倒くさい女でごめんよ。

honnosukima.hatenablog.com

 

『身の丈』というか互いにありのまま、心がスッポンポンの状態でゲラゲラ過ごせる人と出逢いたいものだ。

 

あれもこれも欲しいと欲張っても、私もこの長女のように全部を抱えることのできる器量を持っていないと思う。ほどほど【が】良いや。

 

★★★★

『クレジット・カード』という章に出てくる女性の1人はおそらくご自身がモデルなのだと思う。

 

私は群ようこさんがお財布事情を綴ったエッセイ『財布のつぶやき』も読んでいて、このエッセイは『姉の結婚』から約15年経って出版されたもの。

2冊を読破した私は「クレジット・カードを作りたいと言った時に店員に渋い顔をされた女性が、まあ、ずいぶんご立派になられて~~」と誰目線だよ!?とツッコミを入れたくなる感情を抱きました。ほんと、売れましたね!(笑)

 

姉の結婚』はずいぶんと前の作品だけれども、お金と人のアハンウフンは今も昔もあまり変わらず。きっと将来でも私達はこうしてお金にモヤモヤしたり翻弄されたりする日々の中で暮らすのでしょう。

 

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