【へその緒スープ】(著:群ようこ)を読了。
文庫本の裏表紙に書かれているあらすじに『なにげない日常に潜む「毒」を見事に切り取った…』とあったから手に取ったのだけど、これ”毒”かなあ?と思うようなただ不快なだけの内容もいくつかあった。
家族問題を題材にした『へその緒』『着物』はまさにそれで、物語でよくある”勧善懲悪”や”やったことは自分に返ってくる”なんてことが起きず、ただただ報われなくて、読んでいてウゲーッと思った。
嫌味な義母との同居、遺産問題でよく聞くようなバッドイベントではあるけれど、せめて物語の世界でくらい何かバチが当たらんかね。
『レンタル妻』『贈りもの』は少し”笑ウせぇるすまん”っぽいなと思いながら読んでいた。
最初は戸惑っていたサトコもお金を使い始めると楽しくなってしまって、使いっぷりに迷いがなくなってくる。セールを狙わなくても良い事、同僚が「お」って目で見てくること、色んなことに気分が良くなっていく。
あぁ、やつが来るぞ……。
サトコがお金を随分使いきったある日、1人の女性が家を訪ねてくる。
その女性はサトコの前にトイレに入った女性で、彼女はお金が惜しくなって戻ってきたらお金が無くなっていることに気が付いて、サトコをストーキングして個人情報を得て脅してきたのだ。
話のミソはその女性が大金の持ち主では”ない”というところだろうか。
「黙っててあげるから、あたしにも分け前をちょうだいよ。ニ、三分違っただけで、あんただけこんなにいい思いができるなんて、ずるいよ」(P57)
お金をたくさん使っちゃったサトコは「そんなお金ないよ」って気持ちと同時にこんなことを思う、「仮に分け前を準備できたとして、解放してもらえるとは思えない。もっと強請られるのでは」と。
「なんで持ち主じゃないアンタに強請られなきゃいけないんだ」って私は思ったのだけど、関係者じゃないくせに欲深く関わってくる人間だからこそ何をされるか分からない怖さがあるかもしれないなあとも思った。
どの短編も欲とか嫉妬とかでベチョってしていた。
今ではSNSで人間の本音や裏の顔を簡単に見られるようになったため新鮮味が薄く感じられたけれど、この本は20年ほど前の作品で、当時は今よりずっとネットが遠い存在だったから、当時読んだ人は勉強になった部分もあったのかもしれない。
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