【夜の国のクーパー】(著:伊坂幸太郎)

 

夜の国のクーパー】(著:伊坂幸太郎)を読了。

 

100年以上前に戦争に負けたらしい国。これまでは穏やかに過ごしていたのに、ある日、敵国の兵士がやってきて支配が始まった。

 

前半がつまらなくて、つまらなくて。猫が人間の言葉を理解できるという設定なのだけど、猫らしく自国の人間の会話を聞いたり、敵国の人の様子をふらりと見に行ったり。猫視点で物語を読み進める我々読者。いっそのこと自国民の誰かの視点で物語が進んだ方が相手の出方も分からないし、よっぽど恐怖を感じたんじゃないかと思う。

いや、この物語で伝えたかったことが「戦争って怖いよね。」ってことじゃないから、猫視点にしてその部分を和らげているのかもしれないけれども。

 

私はこの小説を読んで、人を閉じ込める方法を学んだ。外に得体の知れない、関わると命を失いかねないナニカがいると言ってしまえば良い。私が見回り役に立候補をして、懸命に逃げてきたような小芝居を打って戻ってくる。グロテスクで見たことのない生き物がいた、鋭利な手をしていた気がする、グチャグチャな死体も転がっていた、なんて具合にね。

 

未知への恐怖と言えば、記憶に新しくあるのがコロナウイルス。外に出るのが怖いよ、って人も沢山いたはず。当時は死者数や感染者数が毎日発表されていたけれども、それを疑った人っていなかったんじゃないかな。

夜の国のクーパー】に出てくる国王は、国民から信頼され、好かれ、支持されている。だから国民は国王の言う「戦士は国のために戦っている(本当はただの相手国への労働力の貢ぎ)」「この国と相手国には大差がない(実際は50分の1の大きさ)」「壁の外には別の町がある(実際は孤立した国)」を疑うことなく信じている。だけど実は嘘ばかりついている、それも自身の保身のために。

 

政府をあんまり信頼していない日本人だってコロナ禍の時は、政府から発表される情報を信じてしまっていた。過信しないこと、何が真実かを疑ってみることはすごく大事だけれども、自分に置き換えてみるとすごく難しいことが分かる。

 

…とまあ、私はこの小説のメッセージを『恐怖による支配』と『現実を疑え』ってことだと思ったものだから、結末が『コミュニケーションを取ろうという気持ちが大事だよ』って内容で締められているのが解せない。

 

あと、クーパーとの闘いの話、あまりに長くしつこかったですね。答え合わせは複眼隊長の独白だけで十分だった気がするなあ。

 

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