【出会いなおし】(著:森絵都)

 

【出会いなおし】(著:森絵都)を読了。

年を重ねるといういうことは、同じ相手に、何度も出会いなおすということだ。会うたびに知らない顔を見せ、人は立体的になる。(p.38)

 

久しぶりに会った友人に『あいつは変わっちまった』と呟くシーンはドラマでも現実世界でも起こる。でもそれはこの本によると、人が変わってしまったのではなく、その人の違った側面が現れた、ということなのだろう。

 

森絵都さんの有名な小説に『カラフル』というものがある。自死を選んだ少年が天使だか死神だかによって誰かの体に魂を入れられる。「自分の体(人生)じゃない、好き勝手にしてやる」と過ごす中で日々が楽しくなっていき、最後に魂が入れられた体は他人ではなく自分の体だったと気が付く、そんな物語だ。

 

死ぬ前のうじうじしていた少年と、その後のハツラツと生きる少年。この2つは紛れもなく同じ人間である。

上で言う“知らない顔を見せ、人は立体的になる”というのは、環境や考え方でまるで別人になったように見えるかもしれないが、それは本人が外(他人)に見せる面が変わっただけである、こういうことが言いたいのではないかと思う。

 

自分にとって良くない面が前面に出ているタイミングで相手を好意的に見るのは難しいだろうけど、”出会いなおし”はきっと何回でも出来る。それを楽しみに過ごすのも悪くない。

 

【出会いなおし】は表題作を含む6つの短編小説が収録されているのだけど、その中の【ママ】という小説がちょっと不思議で、だけども本質を突くようなピリッとした言葉もあって、好きだった。

「体がすこしらくになったら、本をお読みなさい。問題の多くは、自分だけの問題にとらわれすぎることから生まれるものよ。ろくでもないことは、いくら考えたって、ろくでもないままだわ。本を読めば読んだだけ、あなたはあなたから解放される」(P.88)

 

瞑想をするとイライラしにくくなると耳にして、1日10分くらいの瞑想を習慣にしているのだけど、確かに今までイライラしていた出来事でイライラが小さくなっている。考えてもどうしようもないことを考えてモヤモヤを増やしてしまう悪習慣を瞑想でブツッと切ってしまうことが出来ているからかな、と思う。

 

読書に関しては、する前とした後で比較ができないから変化が分からないけれど、良い効果が出ているなら、ただ楽しいから読んでいるだけで何かに期待しているわけではないけれど、それは素直に嬉しいことだ。

 

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