【本日はどうされました?】(著:加藤元)を読了。
初めまして、の作家さんかと思ったら過去に作品を読んでいた。どっちがこの方のスタイルかは分からないんだけど、すごく色の違う作品を書かれるんだなあという印象。あ、どちらもこの人のスタイルじゃない可能性もありますね。
E病院で入院患者の連続不審死が発生。噂を聞きつけたフリーの記者は、看護師、死んでしまった患者の家族、隣に入院していた患者、看護師の知人に、聞き込みをする。決定的な証拠はないものの、浮かび上がってくる犯人の存在…。
独白形式で進められる本作品、この不可解な事件を題材にしている感じとか、ずっと付きまとう嫌な雰囲気とか、恩田陸の『Q&A』にソックリだなあと私は思った。
恩田陸作品は結末に辿り着かないことも多いので、謎の解明はなされていて欲しいって人には【本日はどうされました?】の方が面白いんじゃないかと思う。だけど、作品が持つグルグルとした気持ち悪さや不快感、不安感は恩田陸の方が上かな。
独白形式でみんな各々に話題にしている人物がずっと同一人物だと思っていたんだけど、実はそうじゃなかった。そういう手法は本多孝好っぽいなあと思いました。
感想を探ったらあの人っぽいこの人っぽいと色んな作家の名前が挙がっていて、独白形式も人物が入れ替わっていて読者をミスリードするのも使い古された手法ではあるから、激戦区ですね。飛びぬけて面白いかと聞かれると微妙ですけど、最後まで読むのがツラい小説っていくらでもありますし、そう考えると普通に面白いに区分できる小説なのではないか、という評価です。
犯人は何となく明らかになりますが、犯人の動機がハッキリとは明らかになりません。強いて言うならば生まれ持った嗜虐的な精神が原因なのかな。作中でちょくちょく『悪魔』というワードが使われるのですが、生まれた時からそういう嗜好を持っているなんてまさに悪魔だなあと。
本の中身は好き好きだけど、タイトルは「うーん」って思った人も多かったんじゃないですかね。病院で看護師さんが『本日はどうされました?』と声を掛けるのが一般的だからこのタイトルになったらしいですが、いやいやいやタイトル思い付かなかっただけじゃない?ってね。中身を読んでもピンとこないタイトルでしたよ。『悪魔』とかで良かったんじゃないですか、知らんけど。
本日はどうされました? (集英社文庫(日本)) [ 加藤 元 ] 価格:748円 |