恩田陸の【EPITAPH東京】に寄せて、地方民から見た東京

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『EPITAPH東京』(著:恩田陸)を読了。

 

EPITAPH(エピタフ)とは『墓碑銘』を意味する単語らしいが、それを知ったとていまいちピンとこない自分の経験値や知識の少なさが悲しい。

 

あらすじにはこう書いてある。

東日本大震災を経て、刻々と変貌していく《東京》を舞台にした戯曲『エピタフ東京』を書きあぐねている”筆者K”は、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。

 

先日、東日本大震災から11年のその日を迎えたばかりで、巡り合わせたタイミングで読んでいるなあと思ったのだけど、読み終わってみると震災について書かれた小説だという印象は残っていない。

東京という街を人々の暮らし、歴史、様々な角度から”筆者K”のガワを被った恩田陸が語った本、という感想である。

 

しかしまあ、恩田陸は戯曲(台本)が好きね。【中庭の出来事】という作品も台本や舞台をアイテムにした作品でしたし。

 

東京を知っている人が読むと、恩田陸の視点や感性が新しく感じて面白いのかもしれないけれど、地方住みの私からすると東京ってどこかフィクションっぽいイメージをそもそも持っているので、理解が及ばない東京をさらに不思議に描かれてしまうと、もうお手上げです。

 

東京というのはほとんど記号のようなもので、映画の中の風景と同じく、ほぼ虚構の世界とイコールなのである。

子供の頃、どうしてドラマの舞台といつも東京なのだろうと不思議に思っていたが、東京ならば何が起きても不思議ではないし、誰にとっても距離があるからのだ。だから『東京物語』も、記号としての東京を描いた映画なのだ。(P173)

 

東京のスクランブル交差点や原宿通りって結構テレビに映るんですよ。お天気コーナーとかで。笑っていいとも!がやっていた時はアルタもよく映っていたかな。

それを観て、人も多くてビッグシティで…なんて憧れを抱いていた時期もあります。

 

東京に遊びに行ったことは何度かあるのですが、初めて行った時に「ちっちゃ!」って思ったんですよね。スクランブル交差点の短さ、109のフロアの狭さ、アルタの看板の小ささ、イメージよりもずっとずっと小さくて驚きました。実はビッグシティではなく、コンパクトシティだなあ、と。

 

イメージでどんどん膨れ上がっていく東京。東京という街が虚構の世界とイコール、というかどこかフィクションであるように感じられる、その感覚は地方民として非常によく分かります。実際訪れても尚、テレビ越しに見ていると大きな都市に感じられる、とても不思議な街です。

 

狙ってそうなったわけではないでしょうが、ジオラマにした時に日本の中で一番映える街が東京だとも思います。

 

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