東京二十三区のいわくつきの場所を巡る、ホラー小説と散策小説が合わさった物語となっている。
偶然にも前日、恩田陸が書いた東京散策小説を読んでいて、「いやー、都民じゃないから面白さが味わえなかったわ」という感想を綴ったのだけど、こっち(『東京二十三区女』)は関西在住の私が読んでも面白かったです。
東京二十三区と題名にはありながら、出てきた区は、板橋区・渋谷区・港区・江東区・品川区の5つ。地区ごとに章になっている。
個人的には港区の、目的地を告げてもいつまで経ってもたどり着かないタクシー、の話が面白かったですね。
コタール症候群とは、フランスの精神科医ジュール・コタールという人物が、1880年に発見した奇病である。この病気は、自分はもう既に死んでいて、この世のものではないと信じ込むという、うつ病の一種である。(P203)
これが港区の章のキーポイントなんですけど、調べてみると実在する症状(病気)なんですね。無いものが見えたり(幻覚・幻聴)、その逆だったり、人間の脳って不思議すぎる。
オチもこの章が1番綺麗な気がしました。いや、分かる。身近な人間からすると、なにアンタだけスッキリしているんだ、となるよね。うんうん。
参考文献の多さを見ると”諸説あり”ではあるんでしょうけれど、小説で語られる各地の過去がまるっきりフィクションってこともないんだと思うんですよ。多くの兵士が眠っているとか、処刑地だった、とか。なのでオカルト好きな人も読んで楽しめる小説なんじゃないかと思います。
小説が終わった最後に収録される”解説”の章。
そこに”サンシャイン60”と出てきて思い出したのですが、『霊感のある人集まれ~!』みたいなトピックで「池袋が怖い」「サンシャイン通りって寒くないですか」みたいな書き込みがいっぱいあったなあ、と。あと何だっけ、なんちゃら公園…ウーン、縁のない場所だから忘れてしまった、ある公園の名前も頻繁に出ていました。
ドラマ化もされているようですが、見ません。ちょっとキャスティングが面白そうだなと思いましたが、見ません。ホラーやオカルトって映像でよりも文章の方が不穏さが膨らんで、その楽しさを最大限に享受できる気がするんですよね。
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