【東京すみっこごはん】コロナ禍で奪われたかもしれないモノ

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『東京すみっこごはん』(著:成田名璃子)を読了。

 

商店街の脇道に佇む古ぼけた一軒家には『共同台所 すみっこごはん ※素人が作るので、まずい時もあります。』の看板が。料理を作る人はくじ引きで決定。わいわいガヤガヤ、悩みや生き辛さを抱えた人たちが温かい食事で英気を養います。

 

第一章の主人公である女子高生の楓。偶然辿り着いた『すみっこごはん』に助けを求めるように、二度目は自分の意思でそこを訪れる。そして料理当番のくじを引いてしまう。

「料理苦手だったら手伝ってあげるからね」「魚の内臓を割りばしで取る方法を教えてあげるね」と世話焼きオカンのような女性もいたりして、私もメンバーに加えて下さい!!私にも料理を教えてください!!って気持ちになりましたね。

 

実際は『料理当番はくじで決定です』なんて共同台所があったら、恐ろしくてその扉を叩く勇気はなかなか出ませんが。

 

『東京すみっこごはん』のように食べ物で心が満たされる物語って多いですけど、幸せホルモンって腸で(も)作られるらしくて、理にかなっているんですよね。腸内環境を良くするだろうと言われている発酵食品が多い和食は特に心に良いらしいですよ。現在の日本を見ていると「本当か?」って言いたくなりますけどね。

 

ちょっとした温かいスープを飲むと、お腹だけじゃなくて心まで落ち着くような経験があるので、料理上手というのは生きる上でとんでもない財産だなあと改めて思いつつ。人参料理を作るといつも人参が膜っぽくなってしまう料理レベルの人間なので、ちょっとでも『美味しい』で心が救えるように、料理上手になりたいなあと思いました。

 

登場人物たちが救われていく様を読んでいると、子ども食堂なんかは、コロナウイルスの影響で閉じているところも多いでしょうけど、命を繋ぐお食事処という役割だけでなく、精神的な拠り所でもあったんじゃないでしょうか。早く日常が戻ってきて欲しいな、とこの2年間何度考えたか分からないことをこんな視点からも考えてしまう小説でした。

 

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