恩田陸の『月の裏側』を読みました。
あれれ?私、このタイトルに似たの付けたことあるぞ?
実は『月の裏側』の主人公は『不連続の世界』と同じなのです!
2作読み切って、多聞(主人公)シリーズはもしかしたら一貫して同じことを言いたいのでは?と思ったので似たタイトルを付けてみました。
『月の裏側』あらすじ
九州の水郷都市・やなくら。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。
まさか宇宙人による誘拐(アブクション)か、新興宗教による洗脳か、それとも?事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは「人間もどき」の存在に気づく…。
『月の裏側』感想(ネタバレ有り)
やなくらへ恩師(協一郎)に会いに来た多聞は、失踪事件について彼から耳にする。
失踪事件に巻き込まれた老人たちは、失踪してから戻ってくる間の期間のみ記憶を失って(つまり誘拐以前の日常生活の記憶はある)戻ってくる。
本人たちもどうしていなくなったのか、どこにいたのか、何をしていたのか、誘拐犯はいるのか、何一つわかっていない。
何とも不可解な事件が起きているものだ…と物語はスタートします。
ただ記憶喪失付きの失踪事件ではなく、さらなる気持ち悪い事柄が明らかになっていく。
★ケースその1・協一郎の弟夫婦
じつはこの協一郎、弟夫婦が過去に失踪事件に巻き込まれていた。
見た目も日常生活も失踪前と何ひとつ違いがない。でも、2人の食べる速度があまりにも同じであることに協一郎は違和感を持っていた。
箸の運びが同じスピードなんだ。まるで、鏡に映った人を見ているみたいに (p.191)
驚いて振り向くスピードも一緒なのだという。
もしも何かと入れ替わっているなら、その人らしさはコピーできても無意識のしぐさは範疇外だとでも言いたいのだろうか。
★ケースその2・猫が拾ってくる人間のパーツのおもちゃ
猫が外から何か拾ってくる。
確かめてみると人間の指だったり、ツメの形をした粘土(おもちゃ)だった。
多聞が拾ったものは耳だった。
さらにこんな不可解な事も起きていた。
死んだしまった猫を埋葬するために、火葬場へ持って行った時だった。
火葬の後、何も残らなかったと言うのだ。普通は骨が出てくるはずなのに・・・。
ここで、猫まで偽物なのか?というか、何者かと入れ替わっていたとしてそれは生物ですらないのか?という疑問を持つ。
ホラーサスペンスってやつなんだろうか?
物語が進むにつれて大きくなる気味悪さと深まる謎に、一気に最後まで読んだ。
結局何が言いたかったのかわからん
最後まで読んだんですけどね、結局何が言いたいのか、「盗まれる」って何なのか、全く分からなかったです。
解説を読んでもちんぷんかんぷん。
解説に『郷愁』って言葉が頻繁に出てくるので、辞書も引いてみました。
【郷愁】ノスタルジア・過去をなつかしむ気持ち
ますますよくわからなくなりました。そんな雰囲気あったっけ?いなくなっちゃうのが怖い、自分が取り替えられてしまうのが怖いって内容じゃなかった?
僕たちが生きていると信じているこの現実のほうこそが、そもそも誰かのみている夢なのではないか。 (「解説」より)
つまりはこの小説の世界では生物は『盗まれる』のが当然で、多聞たちが信じている『人間として生きる』っていうのが夢物語ってこと?
『盗まれている』のにその期間(つまり失踪期間)は記憶がないから、皆、自分は人間だと思っているけど、本当はそうじゃないんだよ、もう入れ替わった後なんだぜっていうめっちゃサイコパスっぽい内容だったんだろうか。
だとしたら多聞シリーズ(不連続の世界 (幻冬舎文庫) [ 恩田陸 ])は私たちに「見ている世界が現実とは限らないよ」ってメッセージを一貫して伝えようとしているのかな。