平安寿子の「さよならの扉」を読みました。
何かひとりめっちゃサイコパスな人居たんやけど…!
この作品読んだことある人はこの人にイライラしなかった?私はめっちゃイライラしたよ。
いるよね、こういうワガママをワガママとも思ってない箱入り娘タイプの人って。
「さよならの扉」あらすじ
野依仁恵(のよりひとえ)は専業主婦。娘たちは家を出たが、夫の定年はまだ少し先。静かで幸せな生活が続くと彼女は信じていた。
しかし、夫が末期ガンの宣告を受けた。延命治療を拒否し、静かに最期を迎えたいと宣言した夫は、愛人の存在を告白するのだった……。
はたして、仁恵がとった行動とは!?本妻と愛人の奇妙な関係を、ユーモラスに描いた長編小説。
【ネタバレ有り】「さよならの扉」感想
今流行の「不倫」作品?って思ったら一番の原因である夫はポックリ逝ってしまうのでオドロオドロしい展開は始まりません。
が、妻の仁恵と愛人の志生子(しおこ)の奇妙な関係がスタートしてしまうのです。
ちょっと考えてみて。長年連れ添ったパートナーが死ぬ前に愛人の存在を告白してきたらどうします?
私だったら、無かったことにするかな。愛人の存在なんて知らなかった時と変わらない生活をする。会いたいなんて絶対に思わない。夫も死んでるワケだし。
でも仁恵は愛人に接触を図って、あろうことか懐いてしまうんです。
もちろん愛人である志生子は本妻と関わりを持たないようにしようとするんですけど。
あらすじに「専業主婦」ってわざわざ書いてあるのに思わず「あぁ」って納得してしまうくらい仁恵は空気を読まない。
天然なんだけど強引だから志生子は仁恵をかわせないんです。
恐ろしく常識から外れた行動を普通にやってのける女・仁恵
志生子の父が入院していることを知った仁恵はお見舞いにやってくるんです。
でも志生子は「自分が愛人をやっていたこと」をもちろん父親には言っていないし、本妻に来られると困るワケです。関わりも断ちたいと思っているしね。
「来ないで!」って怒られたのに何で怒られたかわからず帰ろうとしない仁恵に私は恐怖です。
何だろう…仁恵の中では「私たち一人の男を通じて仲良くなれたのよ」って感じなのかな。ナニソレ、めっちゃ怖い…。
もしくは「私は本妻だったんだから愛人やってたアナタに拒否権ないわよ」って意識が根本にあるから勝手気ままに振る舞えるんだろうか。
何が一番ゾっとしたって作品の締めだよ。
さよならの扉に、鍵はない。どうしようもなく絡み合った人生は死をもってしても切り離せず、扉を開けて何度も出入りを繰り返す。死が二人を分かつまで… (p.297)
これはもう運命とか巡り合わせとかそんなモンじゃなくてある種の呪いじゃないですか?
「どうしようもなく絡み合った人生」ってナンダ?本妻と愛人の関係ってこと?
あと「死をもってしても切り離せず」と「死がふたりをわかつまで」って矛盾してないか?
不倫の代償がこの本妻とずっとお友達でいないといけないコトだったら、自分のやったことを悔やんでも悔やみきれないかも。それくらい仁恵のキャラはヤバかった。
残虐系のサイコパスも怖いけど、「空気はよむものじゃねぇ!吸うものだ!」系のサイコパスも別の意味で恐ろしいです。
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