【ブラザー・サンシスター・ムーン】(著:恩田陸)

 

【ブラザー・サンシスター・ムーン】(著:恩田陸)を読了。

 

映像作品は2種類に分類できると思っている。起承転結がハッキリしていたり、何か伝えたいメッセージが含まれている作品。それと、物語に起伏がなく、脚色もなく、ただ淡々とフィクションと感じさせないように作られた作品。

 

後者の作品は評価が割れる。共感するという人もいれば、退屈だとジャッジを下す人もいる。【ブラザー・サンシスター・ムーン】は三人の大学生の日常が淡々と描かれていて、後者の色が強い小説である。

 

起承転結や事件が起きないタイプの小説を楽しめるかどうかは、作者の力量ではなく、読者が物語の登場人物と似たような経験をしてきたかどうかである、と私は思っている。

 

大学生、音楽、映画、小説…。正直なところ、私は「退屈だなあ」と読み進めていたのだけど、読む人が読めばノスタルジーを抱かずにはいられないだろうことは分かる。

 

ただズルイなあと感じたのが『高校時代、空から降ってきた蛇』が延々と意味ありげに語られること。SFか?サスペンスか?とずっと期待してしまう仕様になっていて、どうしたってそこからの物語の展開を期待してしまった。本当、なーんにも無かった。

 

恩田陸作品は作中で意味ありげに触れられた事象が放り投げられっぱなしなんてことが多々あるんだけど、それを許してこれたのは、物語そのものが面白いから。そのメインストーリーが合わなかった今回は、不満感が残ったかな。

 

誰でもない時代。引き延ばされた猶予期間。

インターバル。幕間。それがあたしの四年間だった気がする。(P13)

 

こういう題材をフィクションっぽくなく描いた作品が好きな人には、懐かしくて切なくて暖かくて少しだけキラキラしていて…堪らないんだと思います。

 

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