『これでよろしくて?』(著:川上弘美)を読了。
川上弘美さんって現実か妄想か分からない奇妙なエッセイを書いている作家さんというイメージだったんですけど、普通の、いや”普通の”っていう言葉のチョイスは良くないですね。何て言うのかな…普遍的な?そう、こういう普遍的なストーリーも書かれるんですね。
- 夫が味わっていないの「美味しい」って言うのが気に入らないんです。褒められているから怒ることも出来なくて…
- 彼の家に行ったら、炊飯器や洗濯機にお母様直筆の取り扱い説明書が。でもよく読むとたくさん間違っているのです。嫁姑問題の火種は作りたくないけれど、でも、言いたい!
こんな悩みに女たちが語らいます。
第三者からみると、ふふって笑ってしまうようなことでも、当事者からすると心をモヤモヤさせる厄介な問題なんですよね。いっそのこと大間違いだったら指摘できるのに。ガツンというほどでもないという点が、非常に厄介。
色んな境遇の女が4人も5人も集まれば、まあ幅広い意見が出る。問題が解決せずとも、思いもしなかった視点の獲得は確実に人生を明るくさせると私は思います。
以前、違う小説を読んだ時の感想で、『人間関係は狭く深くよりも、多くの人に関わる(広く浅く)方が”生きやすさ”が手に入るんじゃないか』と書いたんですけど、それを思い出しましたね。
先日、東大を目指していた子が傷害事件を起こしちゃったじゃないですか。その子も、東大に限らず、例えば大学に行かなくても、高収入じゃなくても、ゲラゲラ笑って生きている人に出会えていれば、あんなに思い詰めることもなかったんじゃないかなあ、と思ったりしました。
この小説を読んでいると「その問題をそんな深刻に捉えちゃうの!?」と思ったり、逆に「そんな適当にあしらうの!?」と思ったり。それでも、何だかんだ面白おかしく生きていけるものなんだな、と妙な安心感を貰えます。
悩みがテーマなので、ふと自分の過去の悩みを思い出してみたんですけど、どう解決したのか、いつ悩みじゃなくなったのか、さっぱり覚えていないことが沢山あるんですよね。当時はそれなりに苦しめられたはずなんですけど。
時間が解決する、という言葉があります。
悩みに真剣に向かい合い”すぎない”というのは、ちょっとした生きる知恵なのではないか、と思う今日この頃です。
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