【ひぐまのキッチン】(石井睦美) 感想

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『ひぐまのキッチン』(著:石井睦美)を読了。

 

”ひぐま”こと樋口まりあは、就活にことごとく失敗したものの、祖母の計らいでとある会社に入社することになる。そこで勤めることになったのは秘書業務なのだけど、社長のスケジュール管理、来客の対応…その他に、来客のお客様に料理を振る舞うことも含まれていて…。

 

いやまあ、お茶くみ要員とか、料理を振る舞う秘書(性別:女)とか、なんて昭和体質な会社なんだ…と正直思ってしまいましたね。もう令和ですから。同僚や社長がみな明るい感じなので、ハラスメントは感じないですけど、気持ちの良い設定かと言われると私は『否!』と主張したいですね。

 

料理をしてこなかった樋口まりあが作った料理を食べて、取引先の人たちは「懐かしいなあ」なんて”おふくろの味”だったり”思い出の味”なんかを思い出すんですけど、だから何なんだ、と。

 

それで事件が解決するわけでも、こじれていた人間関係が円滑になるわけでもないんです。「ありがとう、ひぐまちゃん」と新人秘書が褒められるだけ。

 

小説のテーマとして料理をメインにしているのであれば、料理のシーンや味の感想などの描写が物足りないし、仕事をメインに描いているのであれば、彼女に何かに挫折しそれに伴う成長が描かれていても良さそうなものだけれども…。

 

作品の途中ではモヤモヤしても読み終えるとそれが解消される作品は多いですが、この作品は最後まで読んでも、どうも消化不良が続いています。

その原因を考えてみたんですけど、物語って起承転結が大切だって言われますよね。あぁ、そうかこの物語は『結』が弱いんだなあ、と思いました。

 

  • 『起』:就職活動に失敗してしまった主人公
  • 『承』:祖母の計らいでとある会社へ
  • 『転』:予期せぬ仕事をこなすことになって…(客に料理を出す)
  • 『結』:お客さんに「美味しいね」と褒められましたとさ。

 

私の読解力の問題で、実は違うところに起承転結が設けられている可能性も全然あります。…が、率直に”私”は面白くなかったですね。途中で飽きて、最終章を読む前に数日放置してしまいました。

 

無理難題と言われるほどではないですが、「え!」と思う仕事をこなさなければならなくなった主人公のひぐまちゃんは、そんな生活の中で果たして何を得たのでしょうか。

 

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