【蛇を踏む】川上弘美世界の洗礼

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『蛇を踏む』(著:川上弘美)を読了。

 

こういう作品をペロリと読み取れるようになりたいと思いながら、自分の読書力、読解力はまだまだなのだと実感させられる読書時間でした。イマイチわからん。

 

ヒワ子は公園で蛇を踏んでしまう。その日かた蛇は部屋に居つくようになった。母親の姿形をして。蛇は甲斐甲斐しくご飯を作り「蛇の世界は良いわよ」とヒワ子を蛇の世界へと誘ってくる。

 

作品の雰囲気が一貫して灰暗いからか、蛇のその誘いには乗ってはいけないような気がする。どこに連れて行かれるか…それは分からないけれど、ハイと頷いた瞬間に魂を持っていかれてしまうような、そんな不気味さがある。

 

昔から人ならざる者と夫婦になったり家族になったりする物語(異類婚姻譚)がある。色んなパターンがあるけれど、相手が人間でないと分かっていて婚姻関係を結ぶ場合は、生贄として差し出されることがきっかけ、というのが多かったように記憶している。『蛇を踏む』はそのパターンに当てはまっていない。

 

何だろう、イマジナリーフレンド的な?もう1人の自分的な?

おそらくヒワ子は心のどこかで「この世にいるのがしんどいなあ」という気持ちを抱えているのではないだろうか。

現世で生きようとする自分と、現世を去らせようとする蛇。こう思って読み進めると、台詞ややり取りが意味することがちょっと想像できるような気がした。

 

「ヒワ子ちゃん、どうして蛇の世界に来ないの」女がかきくどく。

どうしていいのかわからなかった。わからないわからないと頭の中で言った。しかしほんとうはわかっているのだった。わかっていて、それでも痺れたようになっている。

「蛇の世界なんてないのよ」できるだけはっきりとした声で言った。(P62)

 

「死んじゃえば楽な世界に行けるよ~」って誘う蛇に対して「そんな世界なんて無いわ」と真実を思い出したように見える。

 

妖怪界で有名な鬼も嫉妬や怒り、悲しみなど、人の感情から生まれた説もあるし、【蛇を踏む】の蛇もヒワ子の希死念慮が具象化したものなのかなあ、と思いました。

 

もっと読解力があれば違った観方も出来るのかもしれませんが、2022年の私が読んだ感想はこんな感じ。難しい小説でした。

 

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