「私たちが星座を盗んだ理由」北山猛邦 を読み終えました。
5編の短編集でそのうちの1つの話がタイトルと同じ、つまり表題作なんですけど、個人的にはコレが1番ハマりませんでした。タイトルに惹かれて手に取ったんだけどなあ。
『恋煩い』『妖精の学校』『嘘つき紳士』『終の童話』『私たちが星座を盗んだ理由』の5編のうち『妖精の学校』と『終の童話』の2作に関して感想を記しておこうと思います。
ちなみに『恋煩い』は土屋太鳳ちゃんで映像化もされました。
本当に、ほんと~に少しだけ設定やらおまじないが変えてあって『何故?』って感じだった。小説のままで良いのに。そんな映像化作品。
円盤化はされてないっぽいんですが、YouTubeで「ドラマミステリーズ」って検索するとヒットするので観れます。(消されてたらごめんなさいね)
『妖精の学校』感想
『妖精の学校』は2度読むべき作品。
読んだ人は頭にクエスチョンマークが出たであろう最後の一文『 20° 25' 30'' 136° 04' 11""』。白状します。私も意味がわからなくて他の人が書いた感想記事をカンニングしました。これは沖ノ鳥島の座標を指しているそうです。
これを知ってから読むと、初見では意味が解らなかった物の輪郭が見えてきます。
物語は記憶を失った子供たちがとある世界(島)に閉じ込められるところからスタートします。知識や情報の乏しい子供視点で語られるので想像力の掻き立てられる、個人的には楽しい作品でした。
- 杖のようなものを持つ魔法使い→警棒を持った軍人?
- 巨大な黒い『影』→ヘリ?
ではないかと私は想像しました。
最後の一文が沖ノ鳥島の座標だと分かると、子供たちが連れてこられた理由も透けて見えてきますね。
島の所有権が手に入れば、それに伴って経済水域も手に入り多額の資源になりますからね。島に人を住まわせることによって、島の所有権を主張しようとしている。そのための人材が”妖精になる子供”なのだと思います。
子供たちに届く(見付ける)不可解なメッセージも説明がつきます。
その場所は何処にも属さない!(p.107)
このメッセージはおそらく所有権を争っている相手国からのもの。
図書室の本に隠されていたメッセージ
やがて訪れる妖精候補の君たちに告げる
逃げろ!
今すぐに逃げろ! (p.137)
これは子供たちと同じ国の人間からのメッセージだと読み取れる。
所有権のために子供たちの記憶を奪い、島に閉じ込める。これだけでも残虐なこと。けれど子供たちにはもっと残虐な未来が待ち構えているのかもしれない。
その後の計画を知っている大人が「逃げろ!」と隠れてメッセージを送ってくるような子供たちへの処遇って一体…。
『終の童話』感想
石喰いという人間を石像にしてしまうモンスターが現れて村は大パニック!大事な人を石にされ十数年、悲しみにくれ過ごす人々の前に石像にされた呪いを解くことのできる男、ワイズポーシャがやってきた。すると村では何者かによって石像が壊される事件が起きるようになって…。という物語
※イメージです。
『終の童話』はリドルストーリーと言って読者に結末をゆだねる形式になっています。読んだ人はどんな結末を想像したのかな。
主人公のウィミィも大事な人を石にされてしまいます。ワイズポーシャに石化の呪いを解いてもらうのは順番待ち。
ウィミィも大事な人が石化から解ける日をずっと待っていました。順番がまわってきたのは彼女が石化されてから14年後のことです。
しかし、石像の劣化が激しく、呪いを解いても生きられないであろうことを告げられます。
彼には3つの選択肢があり、これが読者それぞれの想像にゆだねられています。
- 石像を壊す
- すぐに絶命すると知りながら呪いを解いてもらう
- そのままにしておく
どの行動をとるかは明記されていませんが、行動をとる前に『彼女を抱きしめた』のが切なくてたまらないです。14年も待ったんだもんね。
ワイズポーシャという男さえ居なければ「彼女は生き返る」って希望も持たなかっただろうし、この希望が絶望をより大きくさせて切ないなあ…。
ウィミィはついに決断し、それを手に取ると、立ち上がった。(P.311)
とあるので、何らかのアイテムを手にしている、つまり『彼女を石像のまま』という選択は薄いのかな、とも思いました。
『破壊END』も『呪いを解いて絶命END』もどっちでも辻褄があうので、結末の想像は好む本のジャンルで分かれそう。ちなみに私は『破壊END』を想像した。
物語は結構好きなんだけど、1つ気に入らないことがある。
石像壊しの犯人は独白じゃなくて、謎解きっていう形で明らかになって欲しかったよ…!!”傷だらけの石像”とか伏線はいくらでも作れるでしょうに!シリアスなシーンなんだけど犯人が急にブワーって喋り出してちょっと笑っちゃった。めっちゃ喋るやん。
価格:831円 |