『隠し事』恋人の携帯を見たくなる時

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【隠し事】(著:羽田圭介)を読了。

 

同棲する彼女の携帯にメールが届く。ディスプレイに表示された名前には見覚えがあった。なんで彼女はアイツと連絡を取っているんだ?まさか…そんな疑いから彼女の携帯を覗く日々が始まる。

 

携帯を覗き始めると、どれもこれも怪しく思えてくる。苗字だけで登録されている名前は性別さえハッキリと見えてこなかったりする。

疑い始めるとどれもこれも怪しく思えてくる、というのはちょっと分かる気がする。

 

だけどひと言『誰?』って聞いてしまえば良いのに、と思わずにはいられない。

それが出来ない関係ってどんなものだろうと考えてみると、まずは付き合いたて。相手にどのくらい干渉して良いかの距離感を見付けられていないから。

大学時代、小澤氏との恋愛関係について相談を受ける、という口実で夜な夜な茉莉に会い、僕は交際までこぎつけた。七年も前になる。(P15)

 

しかし、こうあるように、二人の交際は七年にも及んでいるわけですよ。

 

もう1つ考えられる説として、相手にベタ惚れしていて「そんな事を言うのなら、別れましょう」と言われるのを恐れている場合。だけど、この主人公の男は、チャンスがあればもっと良い女と付き合いたいと、行動はしていないにしても思ってはいて。

だからまず「誰?」「どういう連絡?」のこの一言が聞けない理由がサッパリ分からない。

 

私自身は『携帯を見ませんか?』という質問にハッキリと『イエス』と答えられる人間ではないけれど、1度は真正面から相手に聞くと思う。○○さんって誰?って。それで濁されたら見たくはなるかも。それでも、相当怪しい態度じゃないとなかなか行動には移せない気はする。

 

彼女の方も何だかちょっとおかしな人で。ラストで主人公の男は彼女の態度にゾゾゾ…っとなるのだけど。

同棲をしていて隠し事が出来ないと言っても、2人ともお互いの本質ことを何にも見ていないように読めた。浮気していないかどうか、監視しているだけ。

 

読みどころは、同じベッドで寝ている彼女の枕元にある携帯を掴んで、布団に潜りこみ、バレないように携帯の中身をチェックする場面だと思うけれど。緊迫感のある描写だったし。いや、布団を共有しているんだから、隣でゴソゴソ潜っていかれたら起きるわ!というね。

 

面白くなりそうで、ならない。だけどその『何か起こりそう』感に最後まで読まされてしまった。

 

隠し事 (河出文庫) [ 羽田圭介 ]

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