【誰かが足りない】思い通りにいかない人生を生き抜くヒント

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【誰かが足りない】(著:宮下奈都)を読了。

 

実はずっと資格の勉強をしていたから本を読むのは1ヶ月半ぶりで。前回更新したものは、読み終えてメモだけ取っていて、勉強に行き詰まったタイミングで更新したものだったりする。【誰かが足りない】はひと月以上開いていてもスルスル読めるくらい、読解難易度は”易”な作品。

 

各章の登場人物、認知症だったり、引き籠りだったり、失敗のニオイに怯えていたり。そんな人たちが1歩踏み出して予約の取れないレストラン『ハライ』に予約を入れる話。

 

読み終えて、どうしてこんなに『ハライ』を重要そうに描いちゃったんだろうと思った。何かキーポイントになっているのではないか?と思わせてくる描写のわりには。偶然同じ日に予約を取った人たちが各章の主人公になっているのだけど、彼ら・彼女らが交差するわけでもない。

『ハライ』じゃなくて、予約の必要なお店だったらどこでも良かったんじゃないかなあ。

 

個人的に学びがあったのは最終章、失敗のニオイが分かってしまう女性の話。

失敗している人、人生が失敗する選択を選んでいる人のニオイが分かる主人公。かと言ってそれをどう止めて良いのかも分からず、不吉なニオイを漂わせる人をただ避けることしか出来ない。「失敗じゃなくて成功のニオイを感じられる能力なら良かったのに。」

 

この女性は『ハライ』に予約を入れるきっかけになる出来事でこんなことに気が付く。

「笑えば良かったんだ」

借金だって、不合格だって、ネコババだって、男に騙されたことだって、笑ってあげればよかったんだ。だって、だたの失敗なんだから。それだけのことなんだから。

「キケルゴールが書いてた」

死に至る病というのは絶望のことのような気がした

「失敗自体は病じゃないんだ。絶望さえしなければいいんだ」(P177)

 

どの作品の感想で書いたのかは全く思い出せないんだけど、「人生で1度も失敗しないなんて無理なんだから」って綴った記憶があって、改めて『失敗しちゃった』って弱みを見せられるのって人としてめちゃくちゃ強いなあと思った。

 

失敗した時に「どこで間違えちゃったんだろう」って人生を遡っていくと、あの人に出会ったのが間違い、出会う場所に行ったのが間違い、そこに連れて行ってくれた友人と出会ったのが間違い、友人と出会うきっかけになった場所に行ったのが…ってズルズルと生まれ落ちた瞬間までたどり着いて、人生を全部を否定することになっちゃうんじゃないか、って描写があったんだけど、何だか分かる気がした。

『生まれてきたのが間違いだった』って思考を私は少し持っていて、失敗の原因探しをしちゃっていたのかなあと思う。

 

失敗した時にどうすれば良いか。落ち込んで、落ち込んで、その後はさっさとそれを過去のことにして生きていくのが1番健全なんだと思う。だって、どんなに嘆いたって過去には戻れないし、やり直しも出来ないんだから。

 

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