ダメ人間が主役な6作の短編集。
ダメな人たちなんだけど、読み進めていくうちにどこか愛らしく思えてくるのだから不思議。
『「付き合っている時には優しいところが好きだったのに、結婚したら優柔不断なところがイヤでたまらない」って言う人がいるけどね、その人は何も変わっていなくて、あなたの見方が変わっただけなの。優しさに惹かれたなら、その個性が持つデメリットも受けれる覚悟を持たなきゃ』という”中村うさぎ”の言葉を思い出す。
”中村うさぎ”は私の中でファンキーな人として認定されているのだけど、コラム記事なんかを読んでいるとズドンと鋭い言葉があって、TVで見せている顔よりもずっとリアリストなのだなあと思う。
『長所と短所は表裏一体』と言われるように、良いなと思っていた一面がある日不満に思えてくることはある。だけどそれは逆パターンも通用する。ダメなポイントは違う側面から見ると長所になっていたりするのだ。
【素晴らしい一日】にはそんな物語が収録されている。
生きる上で必要な努力は、個性を長所として捉えてくれる環境を見付けることじゃないかと思ったりする。優しさを優柔不断でじゃなく協調性と捉えてくれるような、勝気をキツイ性格ではなく向上心があると捉えてくれるような、自分の個性が長所になる環境を。
作中ではこの言葉が1番響いた。
「自活するっていうのは、誰の手も借りないってことじゃないよ。人間、一人じゃ生きられないと割り切ることだ。世の中、持ちつ持たれつ。誰かに助けられたら、いつか誰かを助けりゃいいんだよ。」
カーンと一発、満塁ホームラン。そんな爽快感があった。(P234)
「依存しないためには依存先を増やせば良いんだよ」って言葉を初めて耳にした時『とんでもない宝物を見付けちゃった!』って気持ちになったのだけど、”カーンと一発、満塁ホームラン”か。確かにそれぐらい心が晴れるような気持ちになったなあと、懐かしくなった。
私たちは欠点をなくそうとあくせく努力するけれど、ドラマや漫画なんかでは欠点のある人間ほど魅力的だったりする。美形で性格も良くて頭も良い、そんなキャラクターは意外と人気が出なかったり。
”完璧でないゆえの魅力””欠点が魅力になる”そんなことを改めて認識した気がした。
価格:641円 |