【この世にたやすい仕事はない】(著:津村記久子)を読了。
ストレスに耐えかねて前職をやめた主人公が、社会復帰のために「簡単な仕事を紹介してください」と仕事を紹介してもらう。小説(フィクション)だからある意味当然なのだが、簡単だけど癖のある仕事(職場)ばかりが出てくる。
最初は『一見簡単に見える仕事でも、大変な面はあるのだよ』という内容なのだと思っていたのだけど。
プライベートも仕事もダメダメな日や、ハプニングが起きて苦痛な環境が訪れること、自分が原因だろうがそうじゃなかろうが、そんな精神的にツラいことが重なって穴に落っこちて這い上がれなくなってしまう(=働けなくなってしまう)可能性は誰にでも、どんな仕事にも、存在する。
現に主人公も行く先行く先で「この仕事は自分に向いているかも」と思う度に、ハプニングが起きて続けられない状況になってしまって…。
『楽しい・幸せって気持ちだけで働き続けられる仕事なんてあるんだろうか。多かれ少なかれ誰もが歯を食いしばって働いているのではないだろうか。』
最後まで読むとそんなメッセージがある気がして、なるほどタイトルの通り『この世にたやすい仕事はない』だなあと思った。”簡単な”ではなく”たやすい”という言葉のチョイスが本当にピッタリだと思う。
最後はこんな文章で締めくくられている。
ただ祈り、全力を尽くすだけだ。どうかうまくいきますように。(P424)
『ストレスのない仕事を』と求めていた主人公がそんなものは存在しないと気が付き、前を向いたことが伝わってくる良い締めだ。
この世にたやすい仕事はない (新潮文庫) [ 津村 記久子 ] 価格:737円 |