【dele(ディーリー)】私があなたの嫁ならPCを爆発させないで欲しい

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『自分が死んだら、パソコン爆発してほしいよね』といったセリフを聞いたのは声優の中村悠一さんのラジオだった気がする。

 

その時は最近は色んな物がデジタル化しているから、男の人はこの小さな四角い箱の中に秘密を詰め込んでいるのだなあ、なんて思いながらラジオを聴いていた。

 

もし私が死んでしまったら、家族の誰かがスマホやパソコンの解約を請け負うことになるのだろう。その時に「は、反逆…!」と絶句させてしまうような秘密はないけれど、「思った以上にオタクだったんだな…」と多少驚かせてしまう気はする。

 

【dele(ディーリー)】は「こんな事業があればなあ…」と誰もが1度はチラッと考えたことがあるだろう『死後、パソコンやスマホに残された不都合なデータ記録の削除を請け負ってくれる仕事』の話。

 

何とニーズがありそうな仕事でしょうか…!

しかしながら、”ちょっとディープなオタク世界に浸る私”を抹消するために金銭を払う気になれるかどうかは正直悩ましいところ。ウン十万を請求されるなら、死後の恥だからもう関係ないわという意見にころりと寝返ってしまいそう。

 

つまるところ、「お金を払ってまでも闇に葬りたいんだ」そんな思いで託される秘密には”守りたい存在”があるのだ。

 

★★★★

『dele』に出てくる依頼人たちがデータの削除を望むのは自分のためでもあるけれど、遺してしまう大事な人のためでもある、と思う。

このデータを見ることで悲しまないように、悩んでしまわないように、そんな願いや想いが込められていると感じた。

 

私は断捨離が好きで、昔、遺品整理や断捨離の書き込み(2ちゃんねるみたいなやつ)をまとめたサイトを熟読するのにハマッていた時期がある。

 

『dele』を読んでいると、その中の1つが浮かんできた。

 

離婚してずっと独身だった叔父の家を片付けてきた。

「〇〇ちゃんのパンツが欲しいです」というアダルト雑誌の懸賞に応募するつもりだったのだろうハガキが出てきた。叔父はビデオを借りたり、そういうお店に行ったり、そんな手段をきっと知らなかったんだと思う。存在は知っていたけど行動できなかったのかも。教えてあげたら良かった、連れて行ってあげたら良かったと思った。

 

自分は今は独身だけれど、結婚して遠い将来、妻の遺品を整理することになったとして、その中にすごい物があったとしても、驚きはするかもしれないけど引かないと思う。むしろ、その人を思い出す物があまりにも少ない方が自分は寂しいと思う。

 

数年前に読んだ記事で、今探しても出てこず私の記憶を手繰り寄せたので本文ままとは言えないけれど、こんな感じだった。

 

『dele』にこの投稿と似たエピソードがあるわけではない。でも小説の雰囲気と書き込みの雰囲気が似ていると私は思った。

 

遺品整理はあんまり良いイメージがない。大変、お金がかかる、時間もかかる、そんな経験談が目に付く。断捨離を語るトピックスだから遺品は少ない方が正義!みたいな雰囲気もあった。そんな中で『寂しい』という言葉は、この考え方は、強烈なインパクトだったしその通りだと思った。

 

この書き込み主の優しさと『dele』の世界で表現されていた優しさが私の中で重なる。こんな風に優しさを持った人間に私もなれるだろうか。なれると良いな。

 

読む前は「私のデータも処分してくれ~~!」と思っていたけれど、読了後はそんな自分のちっぽけな恥などどうでも良くなっていた。

独身なので妄想でしかないけれど、大事な人だったら本人が恥ずかしがっていたことさえも愛おしく思える気がした。

 

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ちなみに、『dele』の世界観が好きな人は、漫画になるけれど田中メカの『お迎えです。』も絶対好きだと思う。

 

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