【ミッドナイト・ラン!】小説版ジブリとでも呼びましょうか。

 

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読んで良かったな、と思える本に抱く感想は大きく分けて『学びがあった』『面白かった』の2つだ。

 

今回読んだ『ミッドナイト・ラン!』は後者である。

人生に絶望し集団自殺予定だった5人組がひょんなことからヤクザに追われ、警察にも追われ、キーパーソンを探して奔走する様は、アメリカン映画さながら。

 

主人公サイドに神様微笑みたり~!と思わずにはいられないご都合主義な部分もあるのだけど、読み終えた後に「イエーイ!」とハイタッチをしたくなる程楽しい気持ちになれる。そんな作品である。

 

こんな風に大団円に持っていく作品の在り方はジブリの『魔女の宅急便』に似ている。

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魔女っ娘のキキは、何故だか魔法が使えなくなって、何故だか魔法がまた使えるようになるのだけど、『魔女の宅急便』を観ていてその原因にこだわる人は少ない。

 

これに関して『コンテンツの秘密 ぼくがジブリで考えたこと 』という本の中で、

魔女の宅急便』のキキがそれまで飛べなかったのに最後には「なぜか」飛べる。見ている方はみんな「飛んで欲しい!」と思っているから、「なぜ」飛んだのか「どうして」飛べるようになったのかは結局どうでもよくなって、「と、飛んだ~!」とよろこんで納得するんだ。 

という話がある。

 

魔女の宅急便』では、キキが飛べるか飛べないかのこのシーンで私たちオーディエンスが誰視点なのかと考えてみると、キキでもなくトンボでもなく野次馬の1人としてハラハラと見守っている、のだと思う。

 

『ミッドナイト・ラン!』も似たような構図になっている。

ヤクザと警察に追われる集団自殺に失敗した5人組。それを実況中継するラジオ。ラジオに届く彼らに助けられたという情報や応援メッセージ。

 

いつの間にか、読者としてではなく、いちラジオリスナーとして物語に没入していることに気が付く。

リスナーの1人として「ヤクザや警察に負けないでくれ!」と思っているから、少々むりくりなシチュエーションはどうでも良くて、彼らの無事が分かる度に歓喜する。

 

ジブリで使われた手法と似ていると思いません?

 

冷静に思い返すとアレもコレもとツッコミどころを見付けてしまうのだけど、読後すぐは応援していたチームが試合で勝ったようなワクワクというかちょっと高揚した気持ちになる、そんな小説だった。

 

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