人の感情を読み取る能力って欲しい?
SNSでの匂わせは嫌われる。
恋人の存在やハイブランドをさりげなくアピールすると顰蹙(ひんしゅく)を買うのだ。しかし堂々とUPされたものはあまり叩かれない。
つまり、ブランドを持っている、恋人がいるアピールに人は腹を立てるのではないということだ。「堂々とUPしたらイヤラシイでしょ?でも気付いて~」という投稿者の魂胆を察してイラッとするのだ。
なんと!私にもテレパスの能力があったようだ。
匂わせは炎上するのだからきっと多くの人にも備わっているのだろう。特に共感性が高いとされる女性には高度なテレパスが。
『鈍感力』という本がブームになったように、鈍感である方が生きやすいと思うので、私はテレパスの能力は欲しくない。鈍感であれば色々と察して気疲れしてしまう機会も減るのだろう。
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目は口ほどに物を言う
主人公の七瀬は人の心を読み取ってしまう能力を持っている。彼女は女中として様々な家に住み込み、住人たちのタテマエに隠れた黒々しいホンネを丸裸にする。
七瀬の能力のインパクトがドカン!とくるので見落としがちだけれど、テレパスを持っていなくても登場人物たちは何となくお互いのホンネに気が付いている。
『水蜜桃』では父親自身が家族から下に見られているのを察しているし、息子夫婦も嫁が父親から性的な目で見られているのに気が付いている。
『紅蓮菩薩』では妻は旦那の不倫に気が付いているし、旦那も気付かれていることを察している。
『亡母渇仰』では周りが腹の中で笑っていることが分かるから、妻は恥ずかしさで顔が赤くなるんだろうし。
感情、特に悪意は、不快感として他人に伝わってしまうものである。
人が感情を隠しきることが不可能なのか、テレパシー的な能力が人間には備わっているのか、はたまた両方か。
『家族八景』に出てくる家庭がどうすれば改善に向かうだろうかと考えてみたのだけど、全く浮かばない。というか、それぞれが憎しみベースの感情しか持っておらず分かり合おうという意識が全くない。
『家族八景』は昭和50年に発行された小説なので時代背景もあるのだろうけど、平成生まれの私が令和の時代に読むと「もう家族を解体しちゃえば良いじゃん」と思ってしまう。
家族なのに、と言うよりは、家族だから。
みんな家族やパートナーに対して「自分の都合の良い様に動いてくれないかな」とどこか期待している。それなのに自分のダメな点は受け入れてもらえるのではないかと甘えている。家族だから。
家族は1番身近な他人。彼らにアドバイスを出来るとしたらこのひと言に尽きる。
★★★
ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサはこんな名言を残している。
思考に気をつけなさい、それはいつか言葉になるから。
言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。
行動に気をつけなさい、それはいつか習慣になるから。
習慣に気をつけなさい、それはいつか性格になるから。
性格に気をつけなさい、それはいつか運命になるから。
目は口ほどに物を言う。性格は顔に出る。
字面通りにも読めるけれど、思考は言葉にせずとも相手に伝わってしまうこともあるのだということが『家族八景』や生きてきた経験から分かる。
言葉、行動、習慣、性格をまるっと通り越してガツンと運命を左右することもありそうだ、と『家族八景』を読んで感じた。
しかしながら、自制は出来ても予期せぬ外からの悪意を感じることで汚い感情がフツフツと浮かんでしまう時だってある。
残念ながら、私は七瀬のように”掛け金”を下せないのでテレパスを制限できない。
なのでそんな時は、黒々した感情を生み出す原因(SNSや悲惨なニュースなど)から距離を置いたり、それについて考えないようにする、つまり鈍感力を発揮することで思考の安寧を作り上げていきたい。
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