「読書感想文のコツは、作中で1番気持ちが揺れた部分を核に自身の経験や思考を述べると面白い文章になる。」コピーライティングの本に書いてあった。
【食堂かたつむり】を読み終えて感想を綴ろうと思っているのだけど、どう書けばいいか考えあぐねている。
本作は特に劇的なことは起こらず、ゆっくりと穏やかに進んでいく。
物語がつまらない、ということではないのだけど。
「読みどころは?」と聞かれると「全部」と答えるしかないし、「読まなくて良いところは?」と聞かれると「ない」としか言えない。最初から最後まで読んでこの作品に浸ることが出来るのかな、と思うとどう感想を書けばいいか難しい。
食事って幸せの宝庫
倫子の食堂は1日1組だけ。その代わり決まったメニューはなくて、そのお客様が幸せになれるメニューを倫子は提供する。
『食堂かたつむり』にやってきた人物たちには実際にちょっとした幸運が舞い降りる。このへんはちょっとファンタジーなんだけど、食事って幸福感の宝庫だと思う。
私はインスタントやできあいのものばかりを食べているとちょっと気持ちが落ち込んでくる。逆に丁寧に作った食事はお腹も心も満たされる。
私自身が食事でメンタルが変わる人間だから、通勤でハツラツとしている雰囲気の人を見ると朝から心がホッと出来るような食事を摂ったのかなって思ったりする。
本で読む料理は、普段見過ごしてしまう”食べる幸せ”を思い出させてくれることが多い。食による心の英気のチャージについて1冊を通して語りかけられている気になった。
特に平安寿子の【センチメンタル・サバイバル】の表現が好きだ。
炊飯ジャーを開けてご飯をほぐすついでにしゃもじについた米粒を口に入れたり、味噌汁の味見をしていると、なんだか嬉しくなる。いい匂いだし、おいしいから。
旬の野菜は瑞々しくて美味しいし、炊き立てのご飯は良い匂いがする。
気にしないとサーッと通り過ぎてしまうことだけど、気付くことが出来た瞬間、食事の幸福度がグーンと増すのだから不思議だ。
【食堂かたつむり】は食材に注がれた手間暇、料理に込められた想いが存分に描かれているので、あぁ、今日はいつもより丁寧にご飯を作りたいなあと自然と思えてくる。
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何てったって『エルメス』
本作で1番ギョエ!ってなるのはペットとして飼っていたブタのエルメスを食用にしちゃうとこだと思う。
『命をいただく』ということを示したくて入っているシーンだとは思うんだけど、ペットは家族なのに。
【ブタがいた教室】という映画が賛否両論だったのを思い出した。
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1年後に食べよう!食育の授業です!ってことで豚がクラスに連れられてくるんだけど、子供たちは名前を付けてまるでペットのように世話をするうちに愛着がわいてしまって簡単に食べることが出来なくなってしまう。「食べるべき」「食べないべき」と話し合うという内容。
名前を付けちゃイカン!
エルメスもこの映画も『命をいただく』のアピールとしてはちょっとずれてる気がした。
番組名も覚えてないし何年前かも覚えてないぐらいずっとずっと前に畜産農家さんのドキュメンタリーをTVで観たんだけど、「子豚から育ててますからね、(出荷されていくのに)何にも思わないわけじゃないですけど、【美味しく食べてもらえよ】って見送ってます」って仰ってた。(あ、牛だったかも。)
泣き叫ぶような別れじゃなくても、何かこう「大事に食べよう」って心にクルものがあったけどなあ。
こういうちょっと「んん?」ってところがこの本の評価が割れる理由かなって思ったり。
でも読了感はホンワカしてすごく幸せなんだよなあ。同作者の本をもう1冊ぐらい読んでみたい。ドラマがすごく好きだったので『つるかめ助産院』にしよう。
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