「思い出のとき修理します2」谷瑞恵
「2」と付いているのでもちろん続刊です。
私、シリーズ物って飽きた時に読むべきか中断すべきか悩むから好きじゃないんですけど、1巻に巻数が付いてなかったので騙されました。
でも1巻を読んだ感じでは嫌いな作風じゃなかったので、2巻にもトライしましたよ。
「間違えて2巻から買っちゃった…!」という人はこの作品から読んでも大丈夫な作りになっているので気にせず読みましょう。
「生まれ変わることはできないよ だけど変わってはいけるから」【For フルーツバスケット】
寂れた商店街の片隅に佇む、「おもいでの時 修理します」という不思議なプレートを飾った飯田時計店。
店主の時計師・秀司と、彼の恋人で美容師の明里のもとを、傷ついた記憶を抱えた人たちが訪れる。あの日言えなかった言葉や、すれ違ってしまった思い―――――
家族や恋人、大切な人との悲しい過去を修復できるとしたら?切なく温かく、心を癒す連作短編集。
「きみのために鐘は鳴る」「赤いベリーの約束」「夢の化石」「未来を開く鍵」
「おもいでの時 修理します」という不思議なプレートが飾られている寂れた街に佇む時計屋さん。
プレートに気が付き店を訪れる人たちは、みんな修復したい過去を抱えている。
思い出の修理なんてできるものなのか。過去は変えられないじゃないか。でも、もし思い出を修理することが出来たら…。
【ネタバレ有り】「思い出のとき修理します2」感想
最初にズバっと言ってしまいますが、過去を別のモノに変えるなんてことはできません。
1巻を読んだ人はご存じかと思いますが、本作はタイムトラベルがあるわけでもなければ、特殊能力がある、なんていった話ではないありません。
”思い出を修理する”とはどういうことなのか?
その答えは悲しい思い出の記憶を紐解いていって、誤解や隠れていた優しさを見つけることで、思い出が良いものへと修理されていくということなのです。
「きみのために鐘はなる」
『きみのために鐘は鳴る』は明里のもとへ明里の妹が訪ねてくるストーリーです。
ただこの姉妹ちょっと複雑。血が繋がっているのは半分だけ、そして年も離れている。
明里の妹は「お姉ちゃんは自分のことを妹だと思っていないんじゃないか(思いたくないんじゃないか)」と思い込んでいたんです。
だけど、たまたま居合わせた時計屋さんの客の思い出の修理を通じて、姉の中にはきちんと自分との思い出があって、妹として自分が存在していることに気が付いていく。
年の離れた兄弟・姉妹が「キョウダイらしくない」って結構あるあるだと思うんですよね。
下の子が遊びまわれる年齢になった時には、上の子は既に家を出て自立してたりするしさ。
でも実は上の子はオムツ替えたり、遊び相手になってあげてたりちゃんとお兄ちゃん・お姉ちゃんなんだよってお話。
だけどこの姉妹は家庭環境ゆえにちょっとめんどくさく拗れてしまっていましたとサ。
「未来を開く鍵」
『未来を開く鍵』は妻に素直になれない夫とその妻、そんな夫婦のお話。
この夫がザ・昭和の亭主関白で奥さんに対する態度がなかなか冷たいんです。けれど本当は「感謝している」「苦労かけた」という気持ちを持っていてるんだけど、気恥ずかしさからツンツンしちゃう。
ところがとある事件が起きて奥さんが記憶を無くしてしまうんです。
そんな奥さんに寄り添いながら、ポツリポツリと素直な気持ちを伝える旦那。
そして・・・。
「あたしあなたのお嫁さんになったんですね」「悪かったな結婚式もできなくて」
(´;ω;`)ぶわっ
「しょうがなく私を選んだのかな…」って思い続けていたときに『妻として認めてくれてる』ようなセリフは奥さん嬉しかっただろうな~~。
人生を刻む時計が欲しくなる作品である
「そっくり同じ時計が世の中にいくつあっても、自分に馴染んだ時計はもう唯一無二のもの。かすかな音の違い、竜頭のなめらかな動きかた、そんな小さな癖のようなものがその時計にしかない個性に思えて情がわきます。」 (P.229)
本作の中で時計はただのモノではなく、人の思い出に寄り添うような、まるで見守ってくれているような、優しさをもったものとして描かれています。
この本を読むと不思議と時計に愛着が湧いてきます。
私の思い出になる瞬間にも寄り添ってほしいものです。
”自分に馴染んだ唯一無二の時計”になるように使っている時計を大切にしたくなりました。
寂れた商店街の行く末も気になるのでシリーズ第三弾も読もうと思います。
最後に一つだけ…太一、キミ何者や?
これもそろそろ明らかになってよ~、あとちょっとファンタジーが過ぎる部分が目立ったぞ~
思い出のとき修理します2 明日を動かす歯車【電子書籍】[ 谷瑞恵 ] 価格:627円 |