『中庭の出来事』恩田陸 を読みました。
正直、最後まで確信めいたものを持てずに読んでいたのですが、読み切って良かった。
最後まで読めばわかる!
こういうちょっと捻りがある作品を「ひーひー」言わずに読めるようになりたいものです。
ではでは『中庭の出来事』の感想と解説を始めます。
この疲労感はまさに観劇後のそれそのもの
瀟洒(しょうしゃ:洒落た)なホテルの中庭で、気鋭の脚本家が謎の死を遂げた。
容疑は、パーティ会場で発表予定だった『告白』の主演女優候補三人に掛かる。警察は女優三人に脚本家の変死をめぐる一人芝居『告白』を演じさせようとする
――という設定の戯曲『中庭の出来事』を執筆中の劇作家がいて……。
虚と実、内と外がめまぐるしく反転する眩惑の迷宮。
文庫本で一気に読んでしまうのではなく、新聞や雑誌の連載小説としてじわじわ楽しみたい作品でした。
私なりにどんな作品だったのか解説していきます。
【ネタバレあり】『中庭の出来事』感想
まず『中庭の出来事』をミステリーだ…!って言う人もいるけど、この作品はミステリーではないと思います。
物語の終着点が事件を解決することではないから。
事件解決に気を取られていると、自分がどの立ち位置で読んでいるのか迷子になってしまう不思議な小説です。
はち(8)による『中庭の出来事』の解説
私もただの一読者なので合っているかは確かではありませんが、私はこう読み取りました。
こんな読み取り方もできるんだな~ぐらいの優しい仏の様な心で見ていって下さい。
本に書かれた順番に説明していきます。
★『女性2人、ホテルのカフェのシーン』
⇒これは神谷の脚本のワンシーン
神谷の脚本の内容は
『とある脚本家が自身の脚本の主演女優発表の場で突然死する。その容疑者として挙がったのが主演女優候補の三人で…』
という内容であると推測できる。
★『神谷のこの脚本の主演女優が発表される日、神谷が死んでしまう。』
⇒神谷の作った脚本と、現実の神谷の状況が似ているため、読者が混乱する?(それが狙いなのかも)
神谷殺しの容疑者は女優3人。神谷の脚本の『主演女優候補役』の主演女優たち。
彼女たちは容疑者として、取り調べを受けることになる。
★『こんな感じ(↑)の劇はどうだろうか?と考える劇作家の細渕の登場』
⇒つまり「神谷が自分の作った脚本に酷似した死に方をして~~」というのは細渕が考えているフィクションということ。
「劇作家の細渕という男が脚本を考えている内容なのだな」と思って読み進めていくと、どうやら細渕がいるのは舞台の上のようだ。
⇒細渕は劇作家という役を演じている演者であることがわかる
つまり読者の我々が居た場所は殺人現場などではなく、舞台の客席だったということ。
1つの劇を観劇している面白さがある小説
ミステリー小説だと思って読み進めると、物語が矛盾だらけでおそらくスッキリしないし、謎の解決も出来ない。
この作品の楽しみ方は、作中のリアルだとおもっていた次元が実は別の登場人物の頭の中で、というところ。
- 脚本家が死んでしまったらしい。
- という設定の台本ね~
- え?本当に脚本家の神谷が死んじゃったんだけど
- あ~、これまで全部が、細渕の考えるフィクションか
- ってこれ。細渕も役者じゃない?
- なるほど!読者は舞台を見ている観客なのか!
って感じで読み手の立ち位置が外へ外へと広がっていく。
最終的にはあなたはイスに座って劇を見ていただけなのでした~٩( ᐛ )وケケケ
っていう楽しみ方をする小説なんだと思いました。
出だしの文章だけで「ミステリーだ!」って食いつくと全然理解できないですよね~
頭固くなってるなあ…やられた!
価格:810円 |