【新釈 走れメロス】森見登美彦が書く「走れメロス」がかなりぶっとんでいる

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走れメロス」は多分中学生の時に授業で読みました。あれ?高校だったかな?

きっと「読んだことがあるよ~」って人の方が多いはず!

 

そんな有名作品である『走れメロス』を森見登美彦節で書いたら…?

というのが本作『新釈 走れメロス』です。パロディのつもりなんだろうけどほぼオリジナル(笑)

 

森見作品は基本どれもぶっとんでいるのですが、本作も例にもれず。

 

メロスの人物像に関して色々な説があるんですけど、「あ~森見登美彦はメロスをこんな性格だと読んだんだな」って透けて見えるのが面白かったです。

森見登美彦 演出の『走れメロス』の開演~♪【感想】

走れメロス」あらすじ
メロスは買い物のために訪れた街で暴君ディオニス王の話を聞き激怒する。

メロスは王の暗殺を決意して王城に侵入するが、あえなく衛兵に捕らえられ、王のもとに引き出された。

「人間など私欲の塊だ、信じられぬ」と断言する王にメロスは、人を疑うのは恥ずべきだと真っ向から反論する。

当然処刑されることとなるが、セリヌンティウスを人質として王のもとにとどめおくのを条件に、妹の結婚式をとり行なうため3日後の日没までの猶予を願う。

 
『メロスが一生懸命走る話』という記憶しかなくって、何で身代わりOKだったんだっけって思ったんですけど…。
 
王は「他人を信じるなんて馬鹿らしい」って考えていて、メロスが帰ってこずセリヌンティウスを代わりに処刑することで「ほら、人を信じるなんて無駄だっただろ」って証明できるから身代わりを許可するんでしたね。
 
本来の「走れメロス」はこんなお話でした。

一方で森見登美彦が書く「走れメロス」は…?

〈配役〉

 

所属している部活の部室が奪われた芽野は激怒し、長官に文句を言いに行った。

長官は「桃色のブリーフ1丁で踊るなら部室を返してやる」と提案する。

が、芽野は桃色ブリーフ1丁で踊りたくない。でも部室は返してほしい。

 

そんな辱めを受けたくない芽野は姉の結婚式に出たい。必ず戻ってくるからサ』ウソをついて親友である芹名を身代わりに置いていき、自分だけ辱めを逃れようとする。

 

しかしウソがバレ、長官は意地でも芽野に恥ずかしい思いをさせてやる!と躍起になり、芽野は必死に京都の街を逃げ回る。そんなお話。

 

馬鹿な大学生がおりなすドタバタ追いかけっこに呆れながらも笑ってしまう。

「あいつに姉はいない」という平然と言ってのける芹名に、『お前はドМか!』と思わずツッコんだのは私だけじゃないはず。

 

一体全体、この小説のどこにメロス要素があるんだ…!?って思うんですけど、森見登美彦はメロスを【いい加減なヤツ】だと読んだのだと思うんです。

メロス、不真面目説は実は間違いとは言い切れない

メロス役の芽野が、ずいぶん自分勝手なヤツに描かれているんですよね。

友人を身代わりにして自分は逃げちゃったり。ウソを付いたり。

 

でも本当のメロスも友人の命がかかっているにも関わらず、寝坊したりしっかりご飯を食べるシーンが描かれていたりするのを覚えていませんか?

 

中学生が検証した「メロスは実は走ってないのでは?」も話題になりました。

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画像:http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1402/06/news071.html

 

野や森を進んだ往路前半はたったの時速2.7キロ、「やべぇ間に合わねえ…!」って力を振り絞ったラストスパートも時速5.3キロ。

 

山賊に襲われるハプニングがあったり、最終日でヘロヘロってこともあるから最後の時速5.3キロはまあ良しとしましょう。

でも「友よ!絶対戻ってくるから…!」って出てった前半くらいはもっと頑張ってよ~~時速2.7キロって散歩やん。

 

こういうメロスの「え?本気なんだよね?」ってイマイチ行動が伴っていない部分を、森見登美彦のエキスで煮込むと芽野が出来上がります(笑)

 

太宰治の『走れメロス』をもう1度読んで、メロスのダメさを確認してみたくなりました。学生時代は何であんなに「メロスは一生懸命頑張った」って思い込んでたんだろう。

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