夢が映像として残せる世の中になるとすれば、精神医学はもっともっと発展するんだろうか。
『夢違』はそんな夢が映像に残せる技術、そして映像を解析する職業が存在するようになった世界の話です。
事件解決に関係者の夢を用いようとするんですが、『夢=深層心理⇒事件解決!』って単純にいかないところとか結構リアルで好きでした。
「そう、そう!夢ってそうだよね」って(笑)
そのへんも詳しく、『夢違』の感想を綴っていこうと思います。
『夢違』恩田陸 あらすじ
夢の映像を記録した「夢札」、それを解析する夢判断を職業とする浩章のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。
各地の小学校で頻発する、集団白昼夢。
浩章はパニックに陥った子供たちの面談に向かうが、一方で亡くなったはずの女の影に悩まされていた。
日本で初めて予知夢を見ていると認められた結衣子。
災厄の夢を見た彼女はーーー。悪夢が現実に起こるのを、止めることはできるのか?
『夢違』感想 ネタバレ有り
小学生が集団パニックを起こしたのに全く原因が分からない。
そこで関係ある小学生たちの夢札を引いて、解析してみることになる。
というところからお話がスタートします。
この夢判断がすごい面白くて。
夢が万能な物として扱われていないのもすごい良かったです。
夢だから、現実的じゃないこともバンバン出てくるんです。
- 運動場にいたと思ったら、次のシーンは教室にいたり
- 物の対比がおかしかったり(犬が3メートルあったり)
- 急にプツって夢から覚めて映像が暗転したり
あとは鮮明な夢札が引ける子もいれば、ずっとテレビの砂嵐が混じったみたいにぼやけているような子もいて…
なぜこれが強調されるのか?頑なに見ようとしない物は何なのか?
夢を解析してどうして事件が起こったのかを解明していく仕事が「夢判断」なのです。
職業病『夢札酔い』が本筋の重要ポイントだったりするのかも。
長時間他人の夢を見るこの職業には『夢札酔い』という職業病が存在します。
- 自分の夢なのか他人の夢なのかわからなくなる
- 今、現実なのか夢の中なのかわからなくなる
- 幻覚をみるようになる
読み進めると、自動車事故の失踪事件が不可解なのに究明されなかったり、古藤結衣子の存在が曖昧だったり読み手からするとモヤっとすることがいくつも出てきます。
読み終えて思ったのが、この『夢違』は主人公の浩章の視点で進んでいきます。
実は『現実・浩章の夢・夢札酔いの症状』の3つの世界観から話が成り立っているのではないかと思いました。
だから、読者にとったら不可解な部分もあるし、大事(おおごと)なのにその後一切触れられなかったりする事案(自動車事故の失踪)があるのかなって。
もしかしたら『夢酔い』のヒントがちゃんと隠されているかもしれないし、
ハッキリ物事を追究するシーンと、曖昧なもやっとするシーンをわけて読むと、何か見えてくるのかもしれません。
※あくまで私の想像なので責任は持てません(笑)
古藤結衣子は生きているか否か
これも意見が分かれそうですが私なりの解釈を残しておこうと思います。
結衣子の頭が、かくんと傾いた(P488)
→いわゆる肉体の生存ルートは壊滅的…?
彼女、何度もここにやってきたでしょう?・・・(中略)協力してあげてください(P493)
→今現在の彼女に対してお祈りをしているシーンが出てきます。つまり存在を確認できる状態ではある。
そしてこれまでの内容で
『彼女(結衣子)が夢の中だけの存在になった時、我々の夢や現実に介入できるようになる』とあるので
私の解釈は『結衣子は夢の住人になっていて浩章の意識に介入している』です。
もしかしたら最後のシーンは2人が約束を果たして再会した幸せなシーンなのではなく、第三者からは浩章が一人で見えない誰かと話しているように見えるホラーなシーンなのかもしれません。
あと個人的には早い段階で出てきた「見えない物が見えるようになることは本当に良い事なんだろうか」って言葉が深いなあと思いました。
★★★★
実写化ではありませんが、この『夢違』を原案にドラマ化した『悪夢ちゃん』という作品があります。
連ドラをやり、映画化をし、スペシャルドラマにもなっています。
私はももクロちゃんが出ている作品をテレビで観たのですが、『夢違』が原案だとは気付きませんでした。言われてみれば…?という感じ。
価格:3,448円 |