『パズルの軌跡』を簡単に噛み砕くと「諦めたらそこで試合終了」ってことでOK?

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『パズルの軌跡』機本伸司 読みましたよー。

 

だいぶ昔に『神様のパズル』という作品を読んだことがあるのですが、それの続編だそうで、今さら手に取ってみました。

 

表紙を見ると、ラノベか…?

と思いますが、侮るなかれ!(笑)

 

『神様のパズル』もそうでしたが『パズルの軌跡』も同様、

読み終わったあとに「読みきってやったゼ」となかなか読みごたえのある作品です。

 

 

『パズルの軌跡』あらすじ

ようやく就職した綿貫基一の元に、一通のメールが届いた。それは”ネオ・ピグマリン”という怪しげな会社から接触を求めるものだった。

渋々担当者と会った綿貫だったが、彼らの依頼は、資産家息子の失踪事件の調査を、量子コンピュータを開発した天才美少女・森矢沙羅華にしてほしいというものだった。綿貫は、普通の女子高生に戻ろうとしている沙羅華を説得し、調査への協力を取り付けたのだが――――。

沙羅華と綿貫に、待ち受ける難事件とは!?

 

一応、前作からの情報で持っていた方がいい知識は

  • 沙羅華は天才であるが故に、周りとの協調・生き方に悩みを持っている。
  • 沙羅華の出生がちょっと複雑である

ぐらいではないかな、と思います。

他は本編でカバーできるし、前作を知らなくてもなんとかなりそうです。

 

【ネタバレ有り】『パズルの軌跡』感想

あらすじを読むと『失踪事件』とあるので、なんだミステリーか?

とミステリー好きの私は本作を手に取ったわけです。

 

しかし、この『失踪事件の手掛かり』は天才少女・沙羅華によって簡単にそろってしまいます。

なんてったって、彼女は天才ですから。

 

事件解決ミステリー!かと思いきや、内容はかなり哲学チック

失踪者たちの共通点を探っていくと『ノアスの園』というサイトにたどり着いた2人。

 

サイトの説明によると、この『ノアスの園』を利用すると”幸せ”のその上の”至福”である自分に生まれ変わらしてくれる、そうだ。

 

自殺斡旋サイトか?それとも宗教団体か?

 

沙羅華と綿貫がこの怪しい団体に潜入するところから本格的に物語がスタートする。

 

ノアス』によれば、”幸せ”・”至福”とは”不安”や”不満”がないことなのだという。

それは「もっとこうありたい」という自我を持たないこと、らしい。

 

「プライドがなければもっと穏やかに生きられる」とかそんな感じかな、と思って読んでいた。

 

『自我を捨てることが一般的に見ておかしいことはわかる。でも、捨ててしまえさへすれば、自我を捨てることさへおかしいことと思わないで、全てを肯定して生きていける。これは”至福”だ。』

 

こんなセリフが出てくるんですが、これ理解できる?できない?

 

似たような内容を取り扱った映画があります。

『パズルの軌跡』を読んだ時に、「あ、これって”屍者の帝国”でも言ってた」って思ったんです。

 

屍者の帝国の内容は…

死者をよみがえらせたモノを屍者という。屍者は生前(生きていた時)よりわずかに軽くなる。

それは魂の重さだと言われている…。屍者は意思を持っていなくて…。

 

人間における意思・感情とは何なのか?という作品なんだと思う。

 

思うっていうのは、夜中に観て内容があやふやなのと、専門用語が何の解説もなしにバンバン飛び交うので私の中で理解できないシーンがいくつもあるから。

 

でも、この作品を見ていたからか”自我のない人間=屍者”というイメージを持っていたので

ノアス』が言う至福って何か良さげに言ってるけど、屍者になることなんじゃない?って。

 

『パズルの軌跡』で「ちょっとわかんないな…」って人は、

屍者の帝国』を見ると”自我がない”ってどういう状態なのか理解できると思います。

 

ノアス』という名前に隠されていた真実が闇深い

 

「ここに二つの道があるとする。行く手には門があって、その門を抜ければ、さらに一本道が続いていて、先へ行けるんだ。ORゲートというのは、二つの道の一つでもパスできれば、門が開く。つまり次のステップに向かって、歩き出せる。一つでも希望があれば生きていけるってところかな。けど、何も希望がなきゃ、どうなるんだ。ORゲートだと、門は閉じたまま、開かない…。」

 

「それとは別に”NOR(ノア)ゲート”てものもあるんだ。そいつは二つの道が二つとも駄目だったときに門が開く。つまり、道が閉ざされたときに開くゲートなんだ。さて、その門の先にある一本道が、希望に続くと思うか?」

 

「先にあるのは”死”だろ。そんな連中がつながるわけでもなく、群れ集まっている。だからNORの複合体で、 ノアス”さ。つまりノアスとは、希望どころか、死につながる一本道なんだ。」  (P.349)

 

ORゲートもNORゲートも開かない人間は道の真ん中で立ち尽くせってことか?って思った私は相当ひねくれているとして。

 

要は、二つの道を行ったり来たりしながら、小さくてもいいから希望を見出してORゲートが開くまで泥臭くもがく。

これが”生きていく”ということ。という解釈で良いのかな?

 

でもこれって簡単に言うと

『最後まで…希望を捨てちゃいかん。諦めたらそこで試合終了だよ』スラムダンク安西先生

ってことじゃない?

 

こんな単純なセリフを理論的に証明するとこんなに難しいんですね。