どうも、はち(8)です。
タイトルと表紙に魅かれて手に取っちゃいました。
なんや、この女の子…。
トラブルがあるところに、金の成る木あり!
結構コミカルな作品だったけど、現実にもありえそうなことばかり…。
やっぱ人間、悪いこと、ずるいことはしたらアカンな~って改めて思わせてくれる内容でした。
平安寿子『あなたにもできる悪いこと』の感想をつらつらと語りまーす。
あらすじ
年寄りのセクハラ騒ぎ、教師の不倫にNPOの着服疑惑。きれいごとの裏にトラブルあり、トラブルあるところに和解金あり。
舌先三寸で世間を渡るインチキセールスマンと食えない女がタッグを組んで、そのおこぼれをかすめ取る。
世の偽善と保身を逆手にとってひと儲け!痛快ピカレスク小説。
『金が天下を回るから』『ユニオン』『我が善き心に栄えあれ』『神様によろしく』『あなたが選ぶその人は』『カエサルのものはカエサルに』
【ネタバレ有り】『あなたにもできる悪いこと』感想
ピカレスク小説ってなんぞや…?ってことで調べました。
社会の下層に位置する主人公が、一人称で自己の遍歴や冒険を物語る小説形式。 ピカレスクとは、「悪党」「ごろつき」の意のスペイン語ピカロ(picaro )より。
…なるほど、わからん(笑)
社会の下層=悪党・詐欺師などが主人公の小説だよ~って解釈で良いのかな?
主人公は檜垣。身長178センチ、体重65キロで「単なるハンサムではなく、好感を持たれる」容貌を生かして元々インチキセールスマンとして生業を立てていた。
ひょんなことから、トラブルの渦中にいる人物たちに和解を提案してお金を儲けるようになる。
そんな彼の相棒は無愛想で美人とは言い難い女、 畑中里奈 。
仕事(トラブル)を見つけてくるのは里奈で、檜垣は口舌と頭の回転の速さでたくみにお金の交渉をしていく。
彼らの狙いは大金ではない。
警察や弁護士を呼ばれない、逆恨みもされない、絶妙な金額を狙うのだ。
『公にしたくない問題は金になる』二人のターゲットはそんな問題を隠して生きる人たちだ。
コミカルな作風で楽しかった~。
この物語は檜垣という男のキャラクターが盛り上げてくれているといっても良いと思う。
仕事の貢献度では里奈よりも上であるはずなのに、イニシアティブを握れなかったり。
里奈には仕事以外で関心を向けてもらえなかったり(仕事成功の打ち上げは毎回断られる)。
『お金が世界で一番好き』だと言い切ってしまったり。
有能なだけじゃない檜垣のダメなところが物語をコミカルなものへと仕上げてくれている。
饒舌というのも物語にスピード感やテンポが出てすごく読みやすいよ。
さすがインチキ商品をバンバン売る男やな~。他人の心情を察知して誘導するのなんてお手の物!
ましてやターゲットは『公にしたくないトラブル』を抱えているんだからね。
でもそんな彼でもスムーズにいかない相手が存在したんです。
『我が善き心に栄えあれ』『あなたが選ぶその人は』
『我が善き心に栄えあれ』のターゲットは選挙出馬を目論むNPOの代表者
『あなたが選ぶその人は』のターゲットは選挙立候補者の秘書である。
彼らは疑惑でゆすっても、焦りもしない。こちらの話に耳を貸す気もない。
疑惑をチラつかせても完璧な返答で、隙を突くことができない。
だって、彼らは慣れているから。
彼らのような立場の人間はその手の”揺すり”にはなれっこなのだ。
それに、自分でも追及される事がわかっているから、返答も用意できる。
「自分は正しい」という雰囲気の話し方を心得ている。
強敵現る。という感じ
これまでの章みたいに、檜垣優位で物語が進んでいくのも疾走感があって面白いけど、
今回のように一筋縄ではいかず、檜垣との勝負が見えないのも、読んでいてとても楽しかった。
アドバンテージが行ったり来たりする話術対決って読みごたえあるよね~。
まとめ
以上、『あなたにもできる悪いこと』の感想でしたー。
人はお金に左右されていきているんだなあとつくづく思わされたよ。
- 取れる金額に一喜一憂したり
- ちょっとでも有益になるなら敵同士でも結託しちゃったり
- お金で全て思い通りにしている人がいたり
- 大金に目がくらんで、とんでもないリスクと背中合わせになっている人がいたり
作中ではコメディーに描かれていてさっと流してしまいそうになるけれど、現実にも有りえる話ではあるよな、なんて思いながら読んでいました。
主人公の檜垣も大金に惑わされそうになるのですが、相棒の言葉で踏みとどまります。『大金の裏にはとんでもないリスクがある』
決してフィクションだけの言葉じゃないですよね。